米仏合作映画『神様なんかくそくらえ』が東京グランプリ受賞 第27回東京国際映画祭
「アジアの未来」部門で「作品賞」を受賞したのは、イラン映画『ゼロ地帯の子供たち』である。イラン・イラク戦争という事態に翻弄される子供たちのやるせなさが、緊迫する国境地帯の川に浮かぶ棄てられた廃船を舞台に展開される。作中で、廃船に住みついていた少年の元に、一人の子供兵士が乗り込んでくる。後に、その乗り込んできた子供兵士は、実は少女であることが映画中で明かされる。
上映後の質疑応答で、アミールフセイン・アシュガリ監督兼脚本は「中近東では多くの戦争がある。自分の身を守るために、女の子が男の子の格好をすることは自然の流れである」と語り、本作が現実世界の一角を切り取ったものであることが確認された。本作の英語タイトルが “Borderless(無境界)” であることに関して監督は、「人には壁が無いし、ラインを引いてしまったのは国民ではない。この作品は、国境が無くなれば良いという希望を持って撮った」と語った。
コンペティション部門に出品され「審査員特別賞」を受賞したブルガリア・ギリシャ合作の映画『ザ・レッスン/授業の代償』では、良識も知性もある女性教師が、窮地に追い込まれていくなかで、自らの価値観が大転換を遂げるストーリーが、人間社会の現実味と人間臭さをもって、スリルに描かれている。
主演女優のマルギタ・ゴシェヴァが「シジフォスのような状態において、それでも這い上がろうと努力していたが、ある瞬間、石は下に転がしておけ、というように考えを変える」と表現したように、ブルガリア社会における、一般市民や社会的弱者の行く末が、人間的温かさや希望を持ちつつも、それを遥かに圧倒するある種の絶望感が、確かな脚本、結末のサプライズを持って描かれている。
今回の東京国際映画祭の花形であるコンペティション部門へは、世界各国から全1373作品がエントリーし、そのうち15作品がこの部門での上映に至った。その頂点である東京グランプリには、米仏合作映画『神様なんかくそくらえ』が受賞した。ニューヨークの路上で暮らす薬物中毒の若者たちのリアリズムを、主演女優の実体験に基づいて描かれた本作は、6人の国際審査員により満場一致でのグランプリ受賞となった。審査員長のジェームズ・ガン(脚本家/映画監督)は「語り、映像、インスピレーション、演技、情熱共に、全ての中で最もバランスが良いものだった」と、その選考基準を語った。
(DAILY NOBORDER編集部)
写真:TIFFより