米仏合作映画『神様なんかくそくらえ』が東京グランプリ受賞 第27回東京国際映画祭
先月23日からTOHOシネマズ・六本木ヒルズを拠点に開催されていた東京国際映画祭が31日に閉幕した。今年で27回目の開催となった東京国際映画祭での上映作品数は200本にのぼり、劇場動員数は約4万5千人となった。東京グランプリを含む、全8つの賞の受賞が競われる「コンペティション」部門をはじめとして、アジアからの新鋭監督の作品を上映する「アジアの未来」部門、日本のインディペンデント映画が取り上げられた「日本映画スプラッシュ」部門、世界中の監督作品を集めた「ワールド・フォーカス」部門など、国際的なラインナップを揃えた映画祭となり、各国から多くの映画関係者が駆けつけた。上映された多くの作品はワールド・プレミア上映、あるいはアジア・プレミア上映となった。
今回、「アジアの未来」部門に出品され、「国際交流基金アジアセンター特別賞」を受賞したカンボジア映画『遺されたフィルム』は、クメール・ルージュとその後の内戦を経験した気鋭の女性監督が、トラウマを抱えた人間が織り成す、劇中劇を描いた。歴史面におけるメッセージ性にも増して、映画という媒体を十分に活かして語られた芸術性と、次々と観客の予想が裏切られて進行するどんでん返しに次ぐどんでん返しの脚本の強靭さは、本作品の受賞の妥当性を確信させた。
受賞後の記者会見で、ソト・クォーリーカー監督は「内戦時代のことをカンボジアの人々は語りたがらない。知ろうともせず、恥だとすらしている。(自身の父親や親戚もポル・ポト政権に虐殺されている)私自身の歴史、私自身の国の歴史を、その時代を生きた視点から、その過去と現在が織り成す物語を語り、共有することで、最も効果的に未来につなげて行きたかった。映画人として正しいことをしたと思っている」と語った。
同じく「アジアの未来」部門に出品された韓国映画『メイド・イン・チャイナ』では、中国から韓国への密入国、労働移民、食の汚染問題、社会に蔓延する拝金主義から発祥する不条理劇など、緊迫した社会問題を、緊迫した雰囲気をもって描ききった。
脚本を担当したキム・ギドクは、映画上映後の質疑応答で、中国におけるマクドナルド使用肉の問題、福島産の食品についてのニュースなどに触れ、「その食物に対する偏見というのはどこにでもあると思うが、メイド・イン・チャイナ、メイド・イン・コリア、メイド・イン・ジャパンなど、食物に対する偏見は、食物が作られた国や、そこに住んでいる人たちに対する偏見でもあるのではないか。今回の(作品中で焦点となる)ウナギを通して、観た人々にそうしたことを問いかけることで、各自が答えを見つけてほしい、偏見について考えてみてほしい、といった思いがあった。(食に関連する営みといったテーマを裏に据えて)人間とは何か、ということを問いかけてみたいと思った」と語った。