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CATVの「越境放送」 地デジ化で中止に

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 三重県南部の自営業男性(68)から「契約しているケーブルテレビ(CATV)で、十月から一部の放送が見られなくなった」という疑問の声が寄せられた。調べると、テレビのアナログ放送終了と放送法免許が関わっていることが判明。全国のテレビ放送の難視聴地域などで同様の問題が起きており、視聴者にしわ寄せされている実態が浮かび上がった。

 このCATVで放送されなくなったのはテレビ愛知(名古屋市)の番組。テレビ局は放送法で、放送対象区域ごとに免許を取得しており、同社は愛知県のみが対象区域。しかし電波が届く範囲内では自由に受信が可能なことから、三重や岐阜などの一部地域でも見ることができた。

 CATVはテレビ局の同意を得て、自社アンテナで受信可能なテレビ放送を流しており、放送法で決められた放送対象区域外でも可能だった。状況が変わったのは、地上デジタル放送の開始とアナログ放送の終了(二〇一一年七月)だ。

 その背景には、デジタル放送への投資などでテレビ局の経営が厳しいことがある。各局でつくる日本民間放送連盟(民放連)は以前から、「地方の民放は区域外再放送の増加で、視聴率の低下など経営への打撃が顕著になっている」などと区域外再放送の事実上の縮小を主張してきた。

 今回、テレビ愛知の再放送ができなくなったのは、男性が加入するCATVと、三重県松阪市直営のCATVなど三社。テレビ愛知は「三重県を放送エリアとするテレビ局の同意が得られなければ、区域外再放送に同意できない」と主張している。松阪市は一〇年から、在名や三重県内のテレビ局各社を訪問し、区域外再放送を認めてもらえるよう交渉してきたが実らなかった。

 男性は山間地に住んでおり、電波の受信状況が悪いためCATVと契約している。「テレビ愛知は放送開始以来見てきた。楽しみだったのに…」と残念がる。ところがテレビ愛知は、同じ三重県でも、津市より北側にあるCATVでは今も放送されている。家庭でも地上デジタル放送が受信できるため、再放送不同意の意味がないためとみられるが、難視聴地域だけで放送が見られなくなるという矛盾が起きている。

 同様の問題は全国で起きている。静岡県西部では去年十月末から、テレビ愛知を除く在名テレビ各局の放送が見られなくなった。静岡県下田市や沼津市などではこの秋までに東京キー局の放送がストップ。長野県や新潟県でも放送中止が表面化した。

 服部孝章・立教大社会学部教授(メディア法)は「今まで視聴できた番組が見られなくなるのは、過疎地の切り捨てにつながる。たとえ放送を続けても損失は微々たるものではないのか。区域免許制があり放送局の言い分も分かるが、放送の公共性は高く、行政もメディアも責任は大きい」と話す。

 (寺本康弘)

 

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