(cache) あえて言おう、「元広島」ソリちゃんの引退 : コラム

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2014年11月06日19:06

あえて言おう、「元広島」ソリちゃんの引退

Text by ナガオ勝司　（著者のコラム一覧）

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元広島ソリアーノが引退表明

すでに本人が表明していたことだが、11月6日、アルフォンソ・ソリアーノ外野手が引退した。今年の7月にヤンキースから自由契約になっていた38歳のベテランは、日本人に大変なじみのある選手だった。

まず何と言っても、彼は故郷ドミニカ共和国にあったカープ・アカデミーの出身であり、十代で来日して広島カープに籍を置いていた。メジャーリーグではヤンキースが最初で、松井秀喜とチームメイトだったこともあるし、カブス時代は福留孝介外野手の同僚でもあった。去年からはイチローや古巣広島の黒田博樹投手ともチームメイトだった。

今年のワールドシリーズ王者ジャイアンツのライアン・ボーゲルソン投手のように「元阪神」、「元オリックス」と呼ぶのは、実はあまり好きではない。好きではないのだが、ソリアーノだけは「元広島」と呼んでも気が咎めない。

カブス時代、「ソリちゃん、元気？」と日本語で問いかけると百発百中、日本語で「元気よぉ～」と答えるのが彼だった。

試合に負けると「タノシクナーイ（楽しくない）！」と言うのが常である。

「試合をするのは勝つためでしょ？負けると楽しくないよ」と英語との“チャンポン”で説明する姿はどこか、頼もしかった。

「広島の練習はハードだった。皆で『イッチ！ニィ！』って言いながら走るんだよ。僕はもうメジャーリーグの選手だから、あまり思い出すことはないけれど、今はコウスケとチームメイトだし、クロダ（黒田・当時ドジャース）と対戦することもあるから、時々、昔が懐かしくなる」

ソリアーノは今のところ、40本塁打＆40盗塁以上を達成した最後の選手である。それだけで充分だが、彼は数奇な運命を辿った選手でもあった。

広島に来て2年後のオフ、ソリアーノは契約内容を不服として拒否し、調停委員会の開催となった。この裁定も不服を申し立てたことで、野球協約に従い任意引退選手となり、ヤンキースとマイナー契約を交わした。その間、日米間で契約の解釈の違いなど、文化摩擦に近い軋轢も起き、結果的にポスティング制度の成立を後押しすることになった（誤解のないように記しておくと、同制度は野茂英雄、故・伊良部秀輝両投手の移籍と強くリンクしているが、ソリアーノや彼の元同僚チェコ投手を筆頭とするドミニカ出身選手たちの契約問題とも深い繋がりを持っている）。

ヤンキース時代は活躍していたにも関わらず、あのアレックス・ロドリゲス（当時レンジャーズ・ヤンキースの不協和音＝A‐ロッド参照）とトレードでレンジャーズに移籍し、2年後にはナショナルズに、やはりトレードで移籍した。彼にとってのベスト・シーズンはナショナルズ時代の2006年、46本塁打41盗塁を達成した年だろう。その年のオフにフリーエージェントとなって、8年1億3600万ドルの高額契約でカブスに移籍。2007年と2008年は二年連続でナ・リーグ中地区を制してポストシーズンに進出したものの、いずれも地区シリーズで敗退し、ワールドシリーズ優勝の夢は叶えられなかった。

ナガオ勝司
1965年京都生まれ。東京、長野を経て、1997年アメリカ合衆国アイオワ州に転居。1998年からマイナーリーグ、2001年からメジャーリーグ取材を本格化。2004年、東海岸ロードアイランド州在住時にレッドソックス86年ぶりの優勝を経験。翌年からはシカゴ郊外に転居して、ホワイトソックス88年ぶりの優勝を目撃。現在カブスの100＋？年ぶりの優勝を体験するべく、地元を中心に米野球取材継続中。訳書に米球界ステロイド暴露本「禁断の肉体改造」（ホゼ・カンセコ著ベースボールマガジン社刊）がある。「BBWAA（全米野球記者協会）」会員。