チームとして成果が出せる環境に身を置きたい
広告事業会社のシステム開発から、エンジニアとしてのキャリアをスタートさせた佐々木達也氏。2社目のクックパッドでは、Rubyを武器にWebサービスの改修や、Hadoopによるデータ解析基盤の構築などに携わった。
技術書を2冊出版するなどエンジニアとしてのキャリアは順調に見えたが、30歳を目前にあえて社員数人のスタートアップに身を移す。一人で書くコードの力の可能性を感じると同時に、その限界も知った。
「チームとして成果が出せるようにしたい。そのためにはどんなチームにするべきなんだろう。チームの文化みたいなものが重要なんじゃないか。難しいし正解はないけど、そこにチャレンジしてみたい。そういう風に思えるようになりました」
その想いを満たすため、4社目として選んだのが、ヒトメディアだ。2006年に創業した、教育や異文化領域に特化した出資やインキュベーション事業を行う企業で、代表の森田正康氏は海外での学びを通して、eラーニングなどのオンライン教育事情に精通し、それを日本にいち早く紹介した人物でもある。
ただ、ホームページ冒頭に掲げられた経営理念である「教育で世界を良くする」や、ネルソン・マンデラの言葉「教育こそ、世界を変えるための最も強力な武器である」という言葉は心に響くが、果たしてどんな強みでビジネスを展開する会社なのか。
「それは、僕もよくわからなかったんですよ。でもわからないからこそ、面白いなと思いました。9月で入社後2カ月経ちますが、まだよくわからない」と、佐々木氏は笑う。
事業の「わからなさ」が惹きつけられた
出資企業の中には、Skypeを使ったオンライン英会話サービスの「ラングリッチ」などがある一方で、堀江貴文氏がプロデュースするグルメアプリの「TERIYAKI」や、コスプレイヤーのためのプラットフォームサービス「AMPLE!」があったりする。
「語学や学校関連の事業は、経営理念である「教育で世界を良くする」からイメージしやすいんですが、それ以外に出資している事業の多くは、表面だけを見ていたら何でこんなのやってるんだろうと思ってしまう。
ただ社長のビジョンは奥深くて、一見バラバラに見えるかもしれませんが、実はちゃんとビジョンと繋がっていて、壮大な想いが込められている。出資企業自体も、FANCYの様な世界的にも注目されているものもあり、案件自体のポテンシャルも相当高い。
でも、今言った話は入社してから知った話で、入社前は「教育関連の開発をしている会社」程度のイメージでした。入社してからじゃなければ分からない事はどこの会社にもありますが、ここまで分からない会社はそうそうないように思いますね。入社してからしばらくは、新しい発見の毎日でしたよ(笑)」
と、社長室の小山清和氏が会社の事業内容を解説してくれる。彼もまた、その「わからなさ」に惹きつかれるようにして、ヒトメディアに移った一人だ。
新規事業の開発リーダーをオファーされる
前職のLang-8を退職しようと決めると、佐々木氏は次のフィールドを探して、業務委託の形でいくつかのベンチャーに体験入社するようになった。動画、不動産など業種はさまざまだが、一貫していたのはマネジメント側としてやりたいという想いだった。
「これまで自分がやったことのない仕事をしてみたかったんです。やったことのある仕事は楽だし、それが今の自分の“強み”になっているとは思うけれど、それっていつまでも強みになるかといえばそんなことはないと思うんです。新しいことを探ってみる。それがいつか自分の新しい強み、新たな適性になるかもしれない。そんな思いで、いくつかの企業を体験しました」
フリーランサーの業務委託で食べていくというより、次の企業を探るための、いわば“社会人インターン”。これも佐々木氏流の転職ノウハウの一つといえよう。
ヒトメディアを知ったのは、Lang-8時代。クックパッドOBが主催した教育系の「EdTech Hackathon」の場に顔を出すと、ヒトメディアの森田社長がいた。同社もハッカソンのスポンサー企業の一つだった。
「自分のブログに“今年5月にLang-8を辞めました”と書くと、森田さんから連絡をもらいました。『ちょっと面白い話があるから会わないか』と」
「来年春にはリリースしたい新規事業の開発チームのリーダーをやってくれないか」というのが社長からのオファーだった。チームはインフラ担当も含めて7人。
事業提携先に常駐し、外部のベンダーとも協力しながらサービスを起ち上げる。入社後早々から、佐々木氏は直行直帰で提携先企業に出社する身になった。
「最初は右も左もわからないまま丸投げされたような感じで、困惑することもありましたが、それでも自由にやらせてもらえるのはありがたいですね」
前職のスタートアップで、チームワークでの開発の重要性をあらためて認識していた佐々木氏だからこそ、チームを新たに編成し、そこでリーダーシップを発揮するという仕事は魅力的に思えた。「チームマネジメント」という新しい強み、新しい適性をそこで発見できるかもしれない。
「PLやPMに求められるのは、まずは個々のエンジニアのモチベーションを高め、チームをまとめて、前に進むこと。これまではそういう立場になった経験はないんですが、ないからこそやってみたいなと思いました。技術スキルに加えてマネジメント力をここで身に付けることができれば、今後いろいろなことをやらせてもらえる可能性も広がるかな、と」
その先に見えてきた、“技術顧問”という仕事のスタイル
Web業界をいくつか渡り歩く中で、佐々木氏には、一つ見えてきたものがあった。まだおぼろげではあるけれども、エンジニアとしての次のキャリア戦略だ。
「Web系の小さなスタートアップが困っていることってたくさんあると思うんですが、最大の悩みが人材確保。例えば、手を動かすエンジニアはなんとか確保できても、その後どうマネジメントしたらいいかわからない。創業者が非エンジニアだったりするとなおさら、エンジニア・チームのマネジメントで困ると思うんです。そんな企業に外部から技術顧問のような形で関与していくのはどうだろうかと」
現在のテクニカル・アドバイザーに求められる仕事は多岐に及ぶ。単に技術的な専門知識を教えるだけでは不十分で、ときにはアジャイルを含めた開発スタイルの構築、個々のエンジニアの特性を見抜いた上での分業・協業体制づくり、チームとしての品質ポリシーの策定、そして何よりハンズオン的にその開発にかかわりながら、チーム全体のモチベーションを高めるための心理的な関与もしなくてはならない。
「例えば、元はてなのCTOで、今はKAIZEN platformなどのスタートアップに関わる伊藤直也さんは技術顧問という働き方のロールモデルとして注目しています」
こうした仕事は今のヒトメディアに籍を置きながらでもできるもの。幸い、インキュベーション対象の企業がここには数多くある。
「出資対象企業の一つに、グルメアプリの“TERIYAKI”があるんですが、最近はアプリ開発の一部を投資先担当として開発メンタリングしています。ささやかながらも、自分のこれまでの経験が役に立つと思うと嬉しいですね」
以前に比べてコードを書く時間は少なくなった。コーディングよりもマネジメントの方へ、徐々に軸足を移しているからだ。ただ、「最新技術を知らない、口先だけのマネージャー」にだけはなりたくない。
Webテクノロジーの最新動向を絶えずフォローするにあたっては、彼の“「本」駆動型”の勉強法が活かされる。本を書くために、最新技術を調べ、実践し、評価する。いま準備しているという「Webテクノロジーの新常識」に関する著作の発表が楽しみだが、朝早く起き出して原稿を執筆し、それから会社に出社するという。佐々木氏の忙しい日々は当分続きそうだ。
佐々木 達也氏
株式会社ヒトメディア
1983年生まれ。筑波大学大学院(金属工学)修了。2007年4月 新卒でアドウェイズに入社。広告事業のシステム開発を担当する。2009年7月、クックパッドに転職。大規模データ解析や新規事業「やさい便」の開発などに携わる。2013年3月、Lang-8に転職。双方向言語添削サービスの開発に関わる。2014年7月、ヒトメディアに転職。新規事業の開発に従事。
Twitter:@sasata299 ブログ:sasata299′s blog
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