与党の民主党は、オバマ大統領を投票日まで疫病なみに隔離したい。米国主要各紙に先月、そんな風刺漫画が載った。

 米中間選挙は、それほどまで深まったオバマ人気の低迷ぶりをあぶり出す結果になった。

 野党の共和党が着実に勢力を伸ばし、上下両院を制した。上院でも多数派になるのは8年ぶりのことだ。

 オバマ氏は引きつづき険しい政権運営を迫られる。米政界は早くも見切りをつけたかのように、次の大統領選挙へと話題を移しつつある。

 だが、いまの多極化世界はもはや米国の選挙サイクルを時間軸にして語れる時代ではない。オバマ政権の残る任期2年の間にも、世界はめまぐるしく変わっていくだろう。

 今後も自由主義世界を率いる大国としての自負があるなら、米議会は一刻も早く不毛な政争に区切りをつけるべきだ。

 米国は「決められない政治」に陥って久しい。リベラル派の大統領に対し、保守色を強める共和党はことごとく抵抗し、政権の打倒を叫んできた。

 膨らむ財政赤字の中での社会保障と税制の改革、雇用の創出や所得の保障、広がる格差とともに細る中間層をどう守るか。そうした米国の課題は、先進国に共通する悩みでもある。

 3年前に米国債を初めて格下げした格付け機関は、米国の経済ではなく、政治にこそ病があると警告した。ところが昨年秋も、予算交渉のもつれなどから政府機関が閉鎖され、国債は債務不履行寸前になった。

 世界経済を人質にとるかのような議会の振るまいは、国内外に米政治の機能不全ぶりを印象づけた。結果として大統領の指導力不足が問われるのは仕方ないにしても、野党の狭量さにも問題があったのは明らかだ。

 上下両院をにぎる共和党は、それだけ重責を担うことを自覚すべきだ。少数派市民の急増など社会の変化をとらえ、政権と賢明な妥協を築く国民政党に脱皮できなければ、党だけでなく国も世界経済も沈む。

 オバマ氏にとっても、今後2年間は正念場だ。この6年間、戦争の終結と経済の再建という2大急務に専心した結果、世界が当初期待したような、理想の旗手にはなりえなかった。

 イスラムとの対話、核なき世界、アジア重視、欧州・アジアとの広域自由貿易圏構想など、未完の外交目標は数多い。

 米国だけでなく、世界史にも刻まれる遺産を確かに残してくれた。そんな「オバマ伝説」になるよう望みをつなぎたい。