「サラリーマンは『仕事の奴隷』。沈没船に乗っているのと同じだ」−。大学生たちが自らの将来を切り開こうと、次々に手を出したのは代金50万円の「占い講座」だった。自己啓発に向けた投資名目をうたい、高額で実態のない占い講座の受講契約を締結させたなどとして、被害当時いずれも関西大の学生だった5人が運営会社側に損害賠償を求めた訴訟で、大阪地裁は9月、請求全額の支払いを命じる判決を言い渡した。古典的ともいえる悪質商法に、学生らはなぜ飛びついたのか。将来に苦悩する現代の若者の姿が訴訟から浮かび上がる。
「企業の社長が参加する飲み会がある。来ないか」。判決などによると、関西大システム理工学部の4年生だった男性がトラブルに巻き込まれたきっかけは平成23年夏、高校の同級生から受けた一本の電話だった。
サークル活動なども忙しく、男性は2〜3回は誘いを断ったが、同年冬に再び誘いを受けた。約束の場所で会った同級生がかつてと違い、生き生きと将来の夢を語る姿に衝撃を受けた。
「自分が成長できたのは、起業家とかかわっているから。起業家を育てているオーナーらとの人間関係のおかげだ」
同級生の話に「自分もそのグループとかかわりたい」と伝えると、関大卒業生を名乗る1人の男を紹介された。経済が急成長するインドでの体験を語り、「今の日本には夢を追う人が少ない」「ネパールに本を1万冊寄贈することが夢」と熱弁する姿に魅了された。
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