九州電力川内(せんだい)原発の再稼働をめぐり、きょうから7日まで地元の鹿児島県議会が臨時議会を開く。再稼働推進の陳情が採択される公算が大きい。

 だが現段階で川内原発の再稼働を進めることは無責任であり、反対である。

 原子力規制委員会も原発の安全設備の詳細な審査や保安規定に関する審査をまだ終えていない。県議会と知事は再稼働同意を急ぐべきでない。

 何よりも大きな問題は、住民の避難計画である。

 原発事故を経て、規制委は放射性物質が飛散する過酷事故が起こりうることを原発審査に採り入れた。過酷事故の際の対応手順などを審査するようになったのは前進である。

 だが、過酷事故が起こりうる前提で原発の防災対策を眺めると、他の部分に比べ住民避難計画の弱さが目立つ。整然と避難できることになっていたり、避難に必要なバスの台数さえ未確定だったりという具合だ。

 原発事故を踏まえ、道府県とおおむね30キロ圏内の市町村に避難計画策定が義務づけられた。しかし、規制委は計画作りに直接関与せず、国は地元自治体に「丸投げ」状態だ。

 現状では、避難計画をだれも審査しておらず、いざというときに使える保証がない。

 北陸電力志賀(しか)原発の事故を想定して実施された国の原子力総合防災訓練では、悪天候で船による住民避難ができなかった。同様なことが起きかねない。

 原発30キロ圏の全国155の自治体の首長を対象に朝日新聞が実施したアンケートでは、4割近い59人が避難計画も国の審査対象に含めるべきだと答えた。

 早急に何らかの法制化によって、実効性が担保された避難計画を策定すべきである。

 川内原発と名指しはしていないものの、規制委の火山噴火リスクの取り扱いには日本火山学会が異議を唱えている。噴火予測の限界やあいまいさの理解が不十分というのである。

 福島第一原発事故では、津波の危険性を主張する専門家はいたが、事故を防げなかった。

 規制委や各電力会社は、火山学会の主張に謙虚に耳を傾けるべきである。

 火山リスクは、原発に100%の安全をだれも保証できないことの象徴ともいえる。

 なのに立地自治体首長からは「福島で起きた津波や地震、原発事故に対応するのは十分、100%と言っていいと私は信じている」との発言も飛び出す。

 安全神話に回帰して、同じ失敗を繰り返してはならない。