(英エコノミスト誌 2014年11月1日号)
イランに起きている変化は、核開発協議における交渉の可能性を高めている。11月の期限内に交渉がまとまらないとしても、いずれ合意に至る道が見えてきた。
イランとP5+1の交渉は11月24日に期限を迎える(写真はイラン中部アラクにある重水炉)〔AFPBB News〕
イランの核開発プログラムの抑止を目指す交渉は、期限まで1カ月を切った。
これまで足掛け12年にわたり断続的に協議が行われてきたが、今日に至るまでイランは、求めているのは民生用の原子力であり、原子爆弾ではないと言い張っている。しかし、この主張を心から信じる者はいない。
交渉が決裂した場合、中東に核兵器が拡散する恐れがある。あるいは、イランを押しとどめようと、米国かイスラエルのいずれかがイランの施設に軍事攻撃を開始する可能性もある。どちらの道も、最悪の事態と言えるだろう。
イランと、国連常任理事国にドイツを加えた交渉団(P5+1の略称で知られる)の主張には、いまだに大きな隔たりがある。ここで焦点となっている問題の多くは、合意実行の具体的仕組みに関する事柄だ。両者はウラン濃縮のためにイランが使用できる遠心分離機の数や、合意事項の有効期間、経済制裁の解除時期について、まだ意見が一致していない。
イランと米国がお互いを信頼していれば、この隔たりは容易に埋まるはずだ。両者の関係がここまで悪化している一因として、イランに対する西側の一般的な見方が、もはや戯画の域に達するほどに時代遅れになっている点が挙げられる。イランへの理解が深まれば、核開発交渉を包括的な合意に至らせるためにも役立つし、最低限、最悪の事態を招く交渉の枠組みの崩壊は避けられるだろう。
危険な前兆と遠心分離機
イランのやっていることの多くは、間違っている。イランはレバノンやパレスチナ自治区のテロリストや武装組織に資金を提供しているほか、残忍なバシャル・アル・アサド大統領率いるシリアの政権も支援している。イランの政治家は、イスラエルには存在する権利がないと発言することもしばしばだ。
また、現体制に異を唱える自国民に対しても、残虐かつ不当な仕打ちを続けている。10月25日(現地時間)には、殺人で死刑判決を受けた女性に対し、被害者から性的暴行を受けたためだとの主張があったにもかかわらず、絞首刑が執行された。数日後には、国連の特使が、イランにおける死刑執行件数の急増と女性の取り扱いについて糾弾した。
また、国連傘下の国際原子力機関(IAEA)の高官も最近、イランは核開発に関してすべてを明らかにせず、そのほかにも言い逃れと欺瞞が繰り返されていると、不満の意を示した。