2014年11月5日水曜日

AmazonとGoogle 2つのクラウドの違いとは

動きの早いクラウド業界だけど、「圧倒的シェアを握るAmazonに対して、大手数社が追いかける構図」的論調が多い。実際に色々と利用してみると、一緒に並べて比較するのが間違っているんじゃないかと思うことしばしばだし、なんか最近この手の話がよく身近な話題になるので、ここらで改めてまとめてみる。

まずは、AWS(Amazon Web Services)。

AWSを理解するのには、彼らの根幹事業であるネット販売から眺めてみると良い。Amazonのネット販売の強みは、注文してすぐ届くための仕組み。つまり巨大な倉庫をハブとした物流にあるのは誰もが知るところ。この仕組みを使って、できる限り中間業者を中抜きする。中抜きすることで、余分な時間とコストが削減され、消費者に素早く、低価格に商品を届けられる。まぁ、簡単に言えばこういう理屈。

では、コンピュータはどうだったのか、ちょっと振り返ってみる。

例えば、ある企業が「なんとかシステム」を構築しようとする。きっと、まずはそのシステムに詳しい人(コンサルとかSI会社とか開発会社とか言われる人たち)に相談するわけだ。相談された人は、なんだかんだと検討をして、コンピュータのハードウェア的構成を考える。そしたら、その構成通りにハードウェアを準備してくれる人(ハードウェアの販売会社とか)に依頼をして調達するんだけど、ハードウェアを準備する人たちは自分たちでハードウェアを作っている訳ではないので、ハードウェアメーカーに発注する。

ハードウェアメーカーは、ハードウェアメーカーっていうくらいだから、コンピュータを作っている人かっていうと実はそうではなくて、実際のところどのハードウェアメーカーもみんな同じような台湾のメーカーに発注をしてコンピュータを製造してもらい、自社のロゴを貼り付けて製品としているだけ。(っていうとちょっと乱暴だけど、大きくとらえるとそんな感じ)だから、実のところハードウェアメーカーごとの違いなんて、ケースのデザインとか、貼り付けたロゴとか、検品の差くらいだったりする。

ようやく最後までたどり着いたところでハードウェア調達完了かというと、そうではなく。調達したコンピュータを動かす場所。つまりデータセンターを借りるって話になるわけだ。これもどこがいいかいろいろ検討して、そこに調達したコンピュータを設置して電源を入れたらようやく利用開始になる。

Amazon的発想で言ったら、こんなん「本とか家電製品なんかよりずっと無駄な中間業者がいる」ってことになるんだと思う。で、結局のところ台湾のメーカーが作ったコンピュータを、データセンターに設置して使ってるだけじゃん。って単純化してしまうと、AWSなんだな。

つまりだね、流通業のプライベートブランド(PB)と同じ発想だよ。イオンのトップバリュってやつね。(あー、この「バリュ」ってところが気になる)

つまり誰が作っても大差ないような商品だったら、PB化してしまって基本的な諸元みたいなものだけ説明して、「はいどうぞ」。ユーザーが選択するのは、貼り付けたロゴではなく、筐体のデザインでもなく、性能とコストに関わる諸元でしかないわけだから。

AWSがわかりやすいのは、こうした面倒臭いこれまでの習慣をバッサリと改善して、後は従来の使い方となんら変わることなく利用できるようにしてるから。この途中をバッサリと改善するところが思い切っているので、「すぐに使えて、安く」しかも「従来の使い方そのまま」という、いかにも物流改革でのし上がってきた企業らしいしあがりになっている。

いずれにしても、開発の仕方とかソフトウェアとかプログラミングとか、もろもろ獲得してしまった知識を変えることなく、調達時間と調達コストを変えたいと考える人にとっては、とてもわかりやすく、とっつきやすいので、一気に広がったとも言える。

一方のGoogle。

この会社を理解するには、ぜひGoogleのオフィスに何度も足を運び、ここの人たちと会話をすべきだ。AWSの日本には、ざっくり言うと「営業のための組織」しかないのに比べて、Googleの日本法人は、製品の開発チームがいるのが大きな違いだ。

そのせいなのかなんなのか、Googleにも営業のための組織はあるけれど、なんとなく全員が「新しい何か」を生み出そうとしているようにも感じる。(→ ここ結構重要なんだけど。話が長くなるのでやめときます。)

Googleは、Amazonと違いサービスカンパニーであり、しかも極めてファンダメンタルな、つまり広く多くの人が使えるようなサービスを提供することでビジネスをしている。

実は、このあたりの特質が、Googleをわかりにくくさせているのだとつくづく感じる。

AWSのわかりやすさは、やっていることが単純な流通革命でしかなく、利用者は従来のアナロジーで利用できるからだ。一方のGoogleは、「自分たちが考える次世代のサービスインフラ」を外部に提供しているんだと考えるべき。

利用してみればわかることだけど、彼らにとってGCPのようなクラウドも、BigQueryも、gMailも、Mapも、Analyticsも、横並びで一つのサービスでしかない。様々なサービスを組み合わせて使うことも、それほどストレスなく実現できたりする。うまく利用するとシステムは「とてつもなく簡単」になって「極めて低価格」であり「驚くほどの高性能」を実現できたりする。ただし、従来のアナロジーで発想することはできず、いったん過去のノウハウとかそういうものを捨てて、新たなことに挑戦する覚悟を求められることが多い。

まぁ、このあたりを指して「GoogleはPaaS」で「AmazonはIaaS」とかいう人がいるけど、この「XaaS」という曖昧でわけわかんない言葉、ほんとやめてほしい。だって物事そんな単純じゃなく動いているわけだからね。

ま、そんなことはどうでもいいけど、GoogleにもAWSのように「普通のコンピュータ」を「普通に利用」するサービスはあるわけだけど、上手に利用しようとするとDockerとかKubernetesあたりからはじまって、結局BigQueryとか、多分これからはDataflowとか、そういう斬新でこれまでとは発想を変えなければならないものを駆使することになる。


まぁ、結局どーなのよ。

ということなんだけど、企業システムっつうか、これまで作ってきたソフトウェアとか、これまでのやり方をそのままにして、データセンターだけ変えたいという人は、AWSってわかりやすいしいいソリューションだと思う。

一方、サービスベンダー。社内システムとかではなく、自分たちが作るコンピュータサービスで勝負しなければならない人は、なんかGoogleなんじゃないかと思うんだよね。
結局、サービスも突き詰めていくと様々にきめ細かいことやらなければならないわけだし、多分、そういうことに世界でもっとも気がついていて、しかもファンダメンタルに具現化している企業といえばGoogle。

サービスベンダーにとって、あらゆることを自社でやることが美しいのではなく、自分たちの強みを自社で取り組み、その他のことは他をうまく使うべきだと思うし、そう思えるならGoogleは素晴らしくよくできていると思う。

同時に理解すればするほど、ほんとに嫌らしいくらいよくわかっていると思えるので、今後の動向から目が離せなくなってしまうけど。

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