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はやぶさ2搭載の探査ロボ、山形大2教授が開発参加 電源いらず、跳ねて移動の駆動装置

2014年11月04日 08:01
左から妻木勇一教授、風間亮さん、峯田貴教授。風間さんの持っているのがミネルバ2の模型=米沢市・山形大工学部
左から妻木勇一教授、風間亮さん、峯田貴教授。風間さんの持っているのがミネルバ2の模型=米沢市・山形大工学部
 宇宙航空研究開発機構(JAXA)が30日に打ち上げる予定の小惑星探査機「はやぶさ2」に、山形大の2教授が開発に携わった小型探査ロボットが搭載される。重力が小さい小惑星の表面で、飛び跳ねて移動させるのがミッションだ。2人は「足掛け4年の集大成。しっかり飛んでほしい」と期待いっぱいに口をそろえる。

 はやぶさ2は「ミネルバ2」と名付けられた小型探査ロボット3機を搭載。小惑星に到着後、ロボットは投下され、表面の観察を行う。2機をJAXA、1機を山形大など5大学が中心になったコンソーシアムが手掛けた。山大からは大学院理工学研究科(米沢市)の妻木勇一教授(49)と峯田貴教授(53)が参加。それぞれロボット工学、マイクロマシーンの第一人者で、探査ロボットの動力源開発を担った。

 ロボットは円柱状の箱型で、観察用カメラを積んでいる。コンソーシアムの開発機には、大学ごとに提案した4種類の駆動装置が取り付けられた。小惑星は表面が平たんではないと想定され移動機能が必要。重力が5~44マイクロG(地球は1G)と極めて小さいため摩擦が発生せず、車輪式では空回りする。ちょっとした衝撃で宇宙空間に放り出される可能性もある。多くのアイデアの中からこうした課題に対応できる四つの新機構に絞り込まれた。

 このうち、山大が開発したのは内部駆動式で、電力を使わず円柱型のロボット内で起こした動力源で跳ねる。バイメタルという熱膨張率の異なる2枚の金属板を貼り合わせたものを活用。熱が加わると一方がたわみ、限界点に達し反対側にはじけた際の反動を動力源にしたり、一方を磁石で固定したりし、高温と低温の両方で動く仕組みとなっている。

山形大が開発した駆動装置と同型のモデル。軽さを追求したシンプルな構造だ
山形大が開発した駆動装置と同型のモデル。軽さを追求したシンプルな構造だ
 小惑星は真空のため、昼と夜の温度差が大きい。自転周期が短いことも踏まえ「寒暖の差を生かし電力を使わない発想」(妻木教授)を形にした。コンピューターもバッテリーもいらず、現地の環境エネルギーだけで動かせるため「環境駆動型」と命名した。

 ロボット全体の重さは900グラム弱で、駆動装置は30グラム以内というシビアな条件の中、縦5センチ、横8センチ、高さ4センチほどのシンプルな構造に仕上げた。計算上は数十センチから1メートルほど浮き上がる。バイメタルの寿命は100万回といわれ、長期ミッションにも対応可能だ。

 構造や原理の検討から始め、2012年4月に製作をスタート。ドイツでの落下試験などを経て、今年1月に現物が完成。9月まで微調整を続けた。関わった学生も7、8人を数え一部は既に卒業。大学院修士2年の風間亮さん(23)は「夜も土日もないつらい日々だったけど、飛び立つ時を思い浮かべて頑張った」と話した。

【小型探査ロボット】 はやぶさ2は有機物や水があると考えられる小惑星から試料を持ち帰ること(サンプルリターン)が最大の使命だが、小惑星の地表を観察するため小型探査ロボット「ミネルバ2」と「マスコット」を搭載する。マスコットはドイツとフランスの研究機関が開発。ともに小惑星に投下され、表面を動き回る機能を持つ。ミネルバ2は地形や重力を計測、マスコットは地表の物質を詳しく観察する。観測や検査といった理学的検証に対し、重力が小さい環境下での移動機構を確立することが工学的検証となる。「はやぶさ」に搭載された初代ミネルバは着陸に失敗しており、小惑星上での工学的検証はできなかった。

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