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 その前兆は、宮城県で一斉に異常変動を示した2010年6月に現れている。つまり、前兆から発生まで、9カ月もの長い時間がかかっている。下の図は、宮城県の電子基準点が異常変動を示した高さを表したものだ。

宮城県の電子基準点の最大偏差値

 横軸は2010年の第1週からの週を、縦軸はcm単位の高さを表している。宮城県の電子基準点は、2010年の6月に閾値を超える異常変動を示している。2010年9月には、宮城県の点を含む全国で一斉に異常変動が見られる。

 さらに経験則として、少数の基準点での異常変動の場合は、比較的小さい地震であるのに対し、多数の基準点で異常変動が一斉に起きる場合は、「巨大な規模」の地震になることが多い。全国的に一斉に異常変動が起きた場合、「巨大な規模」の地震が発生する可能性は高いと言える。

 次に、「震源の深さ」はどうだろう。その深さが浅いほど、実際に地震が起きるまでの時間は短い。

 このことを、2013年2月25日に起きた栃木県北部(日光市)で起きた震度5強、および2014年9月3日に同じ場所で起きた震度5弱の地震の例で見てみよう。この時は、震源の深さが10kmと浅かった。このため、前兆から1カ月以内で地震が起きた。

 ただし、「震源の深さ」は事前には分からない。したがって、われわれの方法では、どうしても地震予測は1カ月から6カ月の幅が生じてしまう。

 さらに、この「震源の深さ」の値が極端に大きい場合、例えば100kmより深い場合には、地表にある電子基準点に異常変動が現れない場合もある。つまり、前兆現象が現れない場合がある。しかし、このような場合でも次節で述べるように、予測方法の応用で前兆を把握できる道はある。

地震予測の方法

 これまで見てきたように、大地は水平方向にも上下方向にも変動する。さらには、斜めにも変動する。

 地震は極めて複雑な自然現象であるから、事前にどのような変動をするかは分からない。したがって、三次元的な変動解析をするのが一番良い。われわれの地震予測の基本は、三次元的に異常変動がないかを調べるものだ。

 ただし、この12年間の検証研究の結果、地震に一番敏感に反応するのは「高さ」方向の動きだということが分かった。地球は重力に一番影響されるからだろう。われわれは、水平方向の動きを参考にしつつも、主として「高さ」(前に述べた楕円体高)を使って地震予測の分析をしている。

 その前兆に基づき地震予測をするための指標には、大きくわけて3種類のタイプがある。

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