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渋谷センター街。和孝さんが働いていた「ステーキのくいしんぼ」の看板もある。
渋谷センター街。和孝さんが働いていた「ステーキのくいしんぼ」の看板もある。

部下への暴力「愛があればいい」 パワハラ上司が裁判で証言 渋谷センター街の過労死事件

2014年10月22日掲載 佐藤裕一(回答する記者団)

 渋谷センター街の24歳の飲食店店長が連続勤務90日目に自殺した事件の民事裁判で、店長に暴力をふるっていたエリアマネージャー(当時)の証人尋問が、今年6月、東京地裁であった。マネージャーは、部下への暴力の是非を聞かれると「愛があればいいと思う」と述べ、死亡した店長に手をあげた回数は「何十回」と証言、遺族への謝罪の気持ちも「今はない」と明らかにした。暴力や長時間労働をめぐり、裁判長が「あなたの会社はそういう会社だったのですね」と語気を強める場面もあった。証言などによると、店長は日頃からこのマネージャーの暴力を受けていたほか、毎月200時間ほどの残業を強いられ、2010年11月に過労自殺した。会社側は裁判で「苦痛なら退職している」「自殺に偽装した他殺の可能性」「脱法薬物を使用していた疑い」などと主張している。会社と上司の言い分を報告する。(肩書きなどはすべて当時)

DIGEST

  • 「息子さんは出勤途中、知らない人に刺されて死んだ」
  • エリアマネージャー、部下のシャツを燃やそうとする
  • 殴る蹴る 「目が腫れていたり、唇が切れていたり」
  • 彼女も証言 「殴られた傷が腫れていた」
  • 「あまりのひどさにショック」と目撃者
  • 「指導のために叩いた」 会社側、暴力認める
  • 証人尋問:暴力について(1)
  • 証人尋問:暴力について(2)
  • 証人尋問:暴力について(3)
  • 証人尋問:暴力について(4)
  • 証人尋問:暴力について(5)
  • 証人尋問:暴力について(6)
  • 証人尋問:携帯電話を捨てたとする遺族主張について
  • 証人尋問:シャツを燃やそうとしたことについて(1)
  • 証人尋問:シャツを燃やそうとしたことについて(2)
  • 証人尋問:シャツを燃やそうとしたことについて(3)
  • 証人尋問:「謝罪の気持ちはあるか」と聞かれ
  • 「暴行あった」と労基署 調査報告で明らかに
  • 「和孝が毎日12時間働いていたことは知っていた」
  • 裁判長「あなたの会社はそういう会社だったのですね?」
  • ブラック企業ではありません! 会社従業員が必死の訴え
  • 証人尋問:裁判長の最後の質問
  • その他の会社側主張
  • 資料ダウンロード

「息子さんは出勤途中、知らない人に刺されて死んだ」

 渋谷センター街の24歳の飲食店店長が連続勤務90日目に自殺した事件の民事裁判で、店長に暴力をふるっていたエリアマネージャー(当時)の証人尋問が、今年6月、東京地裁であった。

 マネージャーは、部下への暴力の是非を聞かれると「愛があればいいと思う」と述べ、死亡した店長に手をあげた回数は「一度や二度ではない。何十回というくらい」と証言、遺族への謝罪の気持ちも「今はない」と明らかにした。

 暴力や長時間労働の問題をめぐり、裁判長が「あなたの会社はそういう会社だったのですね」「そういうことをやっていた会社なんですね」と語気を強める場面もあった。

 死亡したのは、株式会社サン・チャレンジが経営する飲食チェーン、「ステーキのくいしんぼ」渋谷センター街店の店長をしていた和孝さん(死亡時24歳、姓は匿名)。

 証言などによると、和孝さんは日頃からこのマネージャーの暴力を受けていたほか、毎月200時間ほどの残業を強いられ、連続勤務90日目の2010年11月8日夜、店舗ビル内で過労自殺した。

 労災認定した労働基準監督署の調べによると、和孝さんが死亡前7か月間に取得できた休みは、わずか2日だった。

 遺族によれば、同社は自殺当日、「息子さんは出勤途中、知らない人に刺されて死んだ」と説明したという。

 遺族は12年5月、損害賠償などを求めて会社とマネージャーらを提訴。

 これまでの裁判で、会社側は一貫して責任を認めず、「苦痛なら退職しているのは明らか」「親子関係が悪化していた」「恋人との破綻が原因」「自殺に偽装した他殺の可能性を否定できない」などと主張し、今年8月の弁論最終日には、「脱法薬物を使用していた疑いがある」とする新しい説明を裁判所に提出した。

 東京都監察医務院と渋谷労働基準監督はぞれぞれ、裁判以前の段階で、「死因は自殺」(医務院)であり「業務以外に要因はない」(労基署)とする結論を出しており、会社側の主張は、公的な結論を覆そうとするものだ。

 暴力の証言、エリアマネージャーの一問一答、会社ぐるみを疑う裁判長の質問、発言ミスをきっかけに会社側の主張が崩壊していく様子から、上司や会社側のあまりにブラックな考えが明らかになった。(肩書きなどはすべて当時)

 死亡までの詳しい労働実態や連続勤務の様子、会社側の異常とも思える主張については、2回に分けて報告済みです。なお、会社側は1本目の記事に対して「即刻削除せよ」との警告文を筆者宛に送った経緯があり、このことは2本目の記事に書きました。全体を把握するためぜひお読みください。

・渋谷センター街飲食店の24歳「名ばかり店長」が過労自殺 残業200時間でも休み貰えず

・「苦痛ならとっくに退職している」 24歳店長を過労自殺させた会社の言い分

エリアマネージャー、部下のシャツを燃やそうとする

 和孝さんが死亡する約1年前の09年7月深夜、梅田というこのエリアマネージャーは、和孝さんのシャツに火のついたライターを近づけ、嬉しそうにニヤニヤ笑いながら燃やそうとした。

 その場面を和孝さん本人が撮影した動画が残っていた。

……この記事には続きがあります。



渋谷区恵比寿西の株式会社サン・チャレンジ本社。
会社側の最終書面の冒頭部分と結論部分。
梅田氏の尋問調書の最終部分。
薬物について述べるサン・チャレンジ従業員の陳述書の一部(下)ブラック企業ではないと主張する同社従業員の陳述書の一部。
(上)遺族の最終陳述(下)会社側の回答書。遺族は回答内容について、「面会拒絶は嘘。なぜそこまで嘘をつくのかわからない」と述べている。


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この記事の経緯

 部下である店長に休みを与えないパワハラと殴る蹴るの暴力を繰り返し、自殺に追い込んだとされるエリアマネージャーの証人尋問があると聞いた。女性蔑視を含めた会社側の主張のあまりに酷さに、耐えかねたエリアマネージャーが反旗を翻すかもしれない。法廷には遺族も来るはずだから、謝罪の言葉が聞けるかもしれない。「もしかしたら」という思いとともに、東京地裁に出向いた。


佐藤裕一(回答する記者団)
回答する記者団の運営者です。若者の過労死・過労自殺をおもに取材しています。@kishadan_editor
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