渋谷センター街の24歳の飲食店店長が連続勤務90日目に自殺した事件の民事裁判で、店長に暴力をふるっていたエリアマネージャー(当時)の証人尋問が、今年6月、東京地裁であった。マネージャーは、部下への暴力の是非を聞かれると「愛があればいいと思う」と述べ、死亡した店長に手をあげた回数は「何十回」と証言、遺族への謝罪の気持ちも「今はない」と明らかにした。暴力や長時間労働をめぐり、裁判長が「あなたの会社はそういう会社だったのですね」と語気を強める場面もあった。証言などによると、店長は日頃からこのマネージャーの暴力を受けていたほか、毎月200時間ほどの残業を強いられ、2010年11月に過労自殺した。会社側は裁判で「苦痛なら退職している」「自殺に偽装した他殺の可能性」「脱法薬物を使用していた疑い」などと主張している。会社と上司の言い分を報告する。(肩書きなどはすべて当時)
渋谷センター街の24歳の飲食店店長が連続勤務90日目に自殺した事件の民事裁判で、店長に暴力をふるっていたエリアマネージャー(当時)の証人尋問が、今年6月、東京地裁であった。
マネージャーは、部下への暴力の是非を聞かれると「愛があればいいと思う」と述べ、死亡した店長に手をあげた回数は「一度や二度ではない。何十回というくらい」と証言、遺族への謝罪の気持ちも「今はない」と明らかにした。
暴力や長時間労働の問題をめぐり、裁判長が「あなたの会社はそういう会社だったのですね」「そういうことをやっていた会社なんですね」と語気を強める場面もあった。
死亡したのは、株式会社サン・チャレンジが経営する飲食チェーン、「ステーキのくいしんぼ」渋谷センター街店の店長をしていた和孝さん(死亡時24歳、姓は匿名)。
証言などによると、和孝さんは日頃からこのマネージャーの暴力を受けていたほか、毎月200時間ほどの残業を強いられ、連続勤務90日目の2010年11月8日夜、店舗ビル内で過労自殺した。
労災認定した労働基準監督署の調べによると、和孝さんが死亡前7か月間に取得できた休みは、わずか2日だった。
遺族によれば、同社は自殺当日、「息子さんは出勤途中、知らない人に刺されて死んだ」と説明したという。
遺族は12年5月、損害賠償などを求めて会社とマネージャーらを提訴。
これまでの裁判で、会社側は一貫して責任を認めず、「苦痛なら退職しているのは明らか」「親子関係が悪化していた」「恋人との破綻が原因」「自殺に偽装した他殺の可能性を否定できない」などと主張し、今年8月の弁論最終日には、「脱法薬物を使用していた疑いがある」とする新しい説明を裁判所に提出した。
東京都監察医務院と渋谷労働基準監督はぞれぞれ、裁判以前の段階で、「死因は自殺」(医務院)であり「業務以外に要因はない」(労基署)とする結論を出しており、会社側の主張は、公的な結論を覆そうとするものだ。
暴力の証言、エリアマネージャーの一問一答、会社ぐるみを疑う裁判長の質問、発言ミスをきっかけに会社側の主張が崩壊していく様子から、上司や会社側のあまりにブラックな考えが明らかになった。(肩書きなどはすべて当時)