『シャンティ デイズ 365日、幸せな呼吸』 驚異の瞑想タイムつき映画!スールキートスの二十一世紀日本のエクスプロイテーション映画最前線(柳下毅一郎) -3,410文字-
監督・脚本 永田琴
撮影 板倉陽子
音楽 戸田信子
出演 道端ジェシカ、門脇麦、村上淳、ディーン・フジオカ
さてこの映画、道端ジェシカ主演のヨガものという知識だけで「おいおい……」と思っていたのだが、見に行ってみたら配給:スールキートスであった。またしてもスールキートス映画! やはりスールキートスこそ二十一世紀日本のエクスプロイテーション映画最前線であったか……と思って見て二度驚いたのだがこれほとんどエクスプロイテーション映画の王クローガー・バブのSecrets of Beauty(劇中でいきなり登場人物がメイクのやりかたを説明したり、美容体操をはじめたりする奥様向け美容映画)を彷彿とさせる前衛エクスプロイテーション。ここまでやるならヨガマット貸し出しサービスとかすればよかったのに! 木幡さんマジで尊敬してますよオレは。全国200万のヨギー感涙の映画とは?
主人公は青森のリンゴ園から「わくわくキラキラしたもの」が欲しくて原宿にやってきた海空(みく)演じるは門脇麦……って『愛の渦』で地味少女をやってた娘ですね。今度は都会に憧れる青森弁バリバリの田舎娘。母親との会話は全部青森弁なんで、そこは字幕まで入る。そういう意味では演技は達者なんでしょうが、記号的にステレオタイプな田舎者演技でなんだかなあ、という感じ。
しかも空気がよめず自己中心的で他人に迷惑をかけまくる好感の持てない主人公ナンバー1なのだが少女漫画的、というかスールキートス的にはそれでかまわないのだ。これぞ「そのままのきみでいいよ」主義。
で、お金を貯めて東京に出てきた主人公、テレビで見たモデル兼ヨガインストラクターのkumi(道端ジェシカ)に「この人……本当に人間!?」と一目惚れ。ヨガ教室におしかけて追っかけとなる。ちなみにkumiは雑誌の表紙をかざり、自前のヨガ服ブランドも立ち上げる計画があるというスーパーセレブ。ふうん。当然寄ってくる海空のことも「あの子……ストーカー?」と警戒している。いや実際海空はまがいではなく本物のストーカーで、スタジオで出待ちしたり、行きつけのバーSoHamに張り込んだり(ゲイのマスター[村上淳]がヨガ教室に通っていることを利用して店を突き止める狡猾な手口……)。だがそんな彼女が数日姿を見せなくなる。kumiもなんとなく気になる様子。数日後、全財産をかかえてあらわれた海空。「どうしたの?」と問うkumiにこの三日ほどのできごとを語るのだが……
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