東京都の小笠原・伊豆諸島沖に出現した中国漁船は、200隻以上に膨れあがっている。サンゴの密漁を狙っているという見方がある一方、専門家の中には「単なる密漁ではなく、西太平洋の覇権を握ろうとする下準備ではないか」と分析する向きもある。安倍晋三首相は来週、北京で開催されるAPEC(アジア太平洋経済協力会議)首脳会議に出席するが、中国の暴挙にどう対応すべきなのか。
「中国の関係部門が、違法行為に対する取り締まりを強めるだろう」
中国外務省の華春瑩副報道局長は3日の記者会見でこう語った。日本近海に、中国漁船が大挙して現れてから、中国当局者が取り締まり強化に言及したのは初めてだ。
ただ、中国は南シナ海や東シナ海で、領土や領海をめぐって他国と平気で衝突を起こしており、現実に取り締まりが行われるかは疑わしい。サンゴ密漁という見方についても、疑問を投げかける意見は多い。
東海大学の山田吉彦教授(海洋政策)は「数十隻ならまだしも、200隻以上に増えれば単なる密漁目的とは考えにくい」と指摘。中国漁船が領海に侵入し、島から見える距離まで大胆に近づいている状況などから「日本の海上警備態勢への挑発の意味合いもあるのでは。現状を国際世論に訴え、中国側にサンゴ密漁を止めさせるよう圧力をかけるべきだ」と語る。
中国でサンゴが高値で取引されるとしても、往復の燃料代が回収できないリスクがあるなか、これだけ大量に押し寄せるのは尋常ではない。