【ミュンヘン】欧州の航空機メーカー、エアバスは、競合が多い小型ジェット旅客機市場に初めて参入することを検討している。座席数90の同社製旅客機の売り込みでは、電気エンジンの先進技術がアピールできるとみている。

 小型ジェット機市場ではカナダのボンバルディア、ブラジルのエンブラエルといった業界大手がすでにロシア、中国、日本の企業と激しい競争を展開しているが、エアバスは、新しいハイブリッド電気推進技術の駆使でいずれ優位な立場を確立できるはずだとみている。ハイブリッド技術を搭載したエアバスのリージョナルジェット(RJ)機は、標準的RJ機が使用する技術に比べ燃料消費を約75%カットすることを目指している。エアバスのジャン・ボッティ最高技術責任者(CTO)はまた、騒音も従来機より少ないため、多くの空港で制限されている夜間の離着陸も可能になると話した。

 ボンバルディアや中国国有の航空機メーカーである中国商用飛機(COMAC)といった競合と張り合っているエアバスは、RJ機の製造に乗り出すことで、商品ラインナップを大きく広げることになる。ボンバルディアもCOMACも、座席数100以上のジェット機市場への参入を視野に入れている。同市場では現在、エアバスの「A320」が最も売れ筋となっている。

 一方、小型旅客機セクターにおけるエアバスが製造に関与する機種は現時点で、イタリアの防衛・航空大手フィンメカニカ傘下のアレーニア・アエルマッキの合弁であるATRのターボプロップ機のみとなっている。

 ただ、エアバスの小型機市場参入は早急には実現しない見込みだ。ボッティCTOは「2030年には実用レベルの試作機をぜひ完成させたい」と話し、ドイツの総合電機大手シーメンス、英航空エンジン製造大手ロールスロイス・グループその他企業と提携し、主要技術を確立していく方針だとした。

 具体的に同社はまず、2人乗り全電気式航空機の製造を17年までに開始することを目標に掲げた新部門「ボルト・エア」を、今夏立ち上げる。エアバスがすでに発表した小型双発機製品群「Eファン」には、より大型なモデルに技術・製造過程が応用できることを証明するため、2人乗りおよび4人乗り航空機のハイブリッド版も製造する予定。

 同社は3月11日から、生産拠点として予定されているフランスのボルドー近郊でEファンの試験飛行を行っている。Eファンは全長6.67メートル、翼幅9.5メートルで、30キロワットの電気エンジン2基を搭載している。設計・製造には18カ月を要する。