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●富岡町の「フクシマエコテック」

 

 政府が富岡町に受け入れを求めている、放射性物質を含む稲わらなどのごみ(指定廃棄物)を埋め立てる最終処分場「フクシマエコテッククリーンセンター」の計画が暗礁に乗り上げている。同町の住民の反対が強いためだ。

●「未来なくなる」 地元反発強く

 政府は放射性物質を含むごみのうち1キログラムあたり10万ベクレルを超えるものと除染土については、大熊・双葉両町に中間貯蔵施設を造って埋め、30年以内に県外に搬出する。県が9月に建設計画の受け入れを決めたため、政府は今後、地権者との間で土地の買い取り交渉に入る。

 これに対しエコテックは、1キログラムあたり10万ベクレル以下の廃棄物が受け入れの対象。東京電力福島第一原発から20キロ圏内で出た解体家屋のがれきや、事故当時に県内各地にあった稲わらなどが主なごみとなる。

 一見、こちらの方が放射性物質の濃度が低く受け入れやすいように思えるが、そう簡単ではない。最大の違いは、中間貯蔵施設で保管したごみはいずれ持ち出されるのに対し、エコテックへのごみは埋め立てて最終処分されることだ。

 「計画が通ったら、除染が終わっても若い人は帰ってこない。富岡の未来がなくなる」。6月、環境省が郡山市で開いた住民説明会で、農家の男性(76)は懸念の声を上げた。エコテックの施設は、富岡町内でも比較的、空間放射線量の低い避難指示解除準備区域にあることが気になる。

 この区域の生活圏は除染が2016年度中に終了する。「なぜ住民が帰れる場所に迷惑施設を置くのか。どうせなら帰れない場所に設けて欲しい」という本音を話す住民も。宮本皓一町長も「必要性は認めるが、なぜこの場所でなければいけないのか」と話す。

 施設が放射性物質を含んだごみ用に造られたものではないことも、住民の不安を呼んでいる。もとからあった産業廃棄物処分場の空いている部分を、指定廃棄物の埋め立てに転用する計画だからだ。

 政府は「10万ベクレル以下のごみであれば従来の産廃施設でも安全に処分可能」と評価する。だが、住民には安全性に懐疑的な見方が強い。同町の行政区長会の坂本寿昭会長(69)は「埋め立て後に施設の底で異常が見つかったら、対処しようがないのでは」と話す。

 6月の住民説明会後、町はこうした住民の疑問を改めて政府に投げかけたが、宮本町長は3日、取材に「国から明確な回答はないままだ」と話した。

 政府は今後、町議会の承認を得た上で再度、住民説明会を開き、計画への町側の合意を得たい考えだ。

 環境省の担当者も「ボールはこちら側にある。町議会や住民が納得してくれる落としどころを模索している」と話す。一方で「福島の指定廃棄物は他県より非常に多い。それを収容できる用地を新たに探す余裕はない」と、現実的な選択肢がエコテック以外にないことに頭を悩ませる。

 政府は、指定廃棄物の処分場を、宮城、茨城、栃木、群馬、千葉の5県にそれぞれ新たに造る計画だ。

 しかし、受け入れを打診された自治体はそれぞれ激しく反発し、先行きは見えない。政府はすでに施設があるエコテックを先頭に5県の計画を進めたいだけに、エコテック計画の成否が指定廃棄物問題の解決の鍵を握る、と見ている。