糖尿病:脂肪分の多い食べ物を取り過ぎると…東大チーム 

毎日新聞 2014年11月04日 19時41分

 脂肪分の多い食べ物を取り過ぎると糖尿病になる仕組みをマウスを使った実験で解明したと、広川信隆・東京大特任教授(細胞生物学)のチームが米科学誌デベロップメンタル・セルに発表した。この成果を応用し、既存の胃潰瘍の薬に治療効果のあることも確かめた。今後、人での有効性を検証していく。

 チームは、45種見つかっている「分子モーター」と呼ばれるたんぱく質のうち、働きが謎だった「KIF12」をマウスで調べた。

 その結果、KIF12は膵臓(すいぞう)と腎臓に多く分布していることが判明。その働きを失わせると、血糖値を下げるインスリンを分泌する膵臓の細胞で、細胞内の反応を調整している小器官の働きが損なわれ糖尿病を発症した。脂肪分の多い食べ物を与えたときも、KIF12が減少し、同じ小器官が働かなくなり糖尿病を発症した。

 この過程に関与するさまざまな物質の構造から、胃潰瘍の薬テプレノン(商品名セルベックス)が有効と考え、2週間投与するとインスリンの分泌量がほぼ正常なマウスと同じになった。

 広川教授は「KIF12は人にもある。テプレノンが、糖尿病の治療薬や予防薬として使えるか調べると同時に、明らかになった仕組みを活用し、より効果のある薬剤を製薬会社と協力して開発していきたい」と話す。【田中泰義】

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