福岡市で開かれている日本火山学会秋季大会(10月28日〜11月5日)で、戦後最悪の火山災害となった御嶽山(長野・岐阜県境、3067メートル)の噴火メカニズムが徐々に明らかになっている。大勢の登山者が山頂付近にいて被害が拡大した半面、証言や写真、映像が多く残されたためで、研究者らは「噴火時の状況が分かる貴重な事例」と受け止めている。一方、学会では今回の水蒸気爆発が今後、マグマ噴火につながるかどうかを注視する必要があるとの指摘も出ている。
学会で発表した東大地震研究所によると、今回は御嶽山山頂の剣ケ峰南西の地獄谷で、マグマか火山ガスに熱せられて地下の「熱水だまり」の圧力が高まり、9月27日午前11時48分ごろから膨張。同52分に火口が開き、湿った火山灰でできた高濃度の「灰雲」がほとんど音もなく噴き上がった。
灰雲は水分による重みで上昇せずに噴きこぼれるような状態で山頂付近を覆い、一部は低温の火砕流となって地獄谷を約2・5キロ流れ下ったとみられる。
さらに、火口が開いたため、熱水だまり内の圧力が急激に低下。水の沸点が下がって一気に沸騰、膨張し、爆発的な2回目の噴火が起きたという。1979年以降の3回の水蒸気爆発とは違う場所に新たに火口ができたことから、大量の岩や石を噴き上げたとみられている。
同研究所は、登山者の証言や撮影した写真、映像も踏まえて推定した。山頂付近などはまだ立ち入れないが、中田節也教授は「かなりの状況が把握できる」と説明。「多くの被災者が出た。事態の把握や今後の監視に火山学を役立たせたい」と話している。
秋田大のグループは山麓で火山灰を採取し、温度で変化する硫黄の成分を調査。噴火前に高い圧力がかかった熱水だまり内の水の温度は287度だったと推定した。
東濃地震科学研究所(岐阜県瑞浪市)の木股文昭・副首席主任研究員は、山麓の測量で今回の噴火後に山体が1センチほど沈降した点に着目。2007年の水蒸気爆発の際に起きた山体の隆起が、今回解消されたとの見方を示した。
東北大のグループは、火口の一つは直径18メートルで最大1・17キロ先へ噴石を飛ばしたとの別の調査結果を基に、今回の水蒸気爆発が火口の地下1・2〜5メートル程度の浅い位置で起きたと推測している。