デフレ状況が15年も続いたことは、日本にとって大惨事だった。1990年代半ばから、日本経済は流動性(資金供給量)の点で縮小し始め、財政に打撃を与えた。公的債務の対国内総生産(GDP)比率は130%超に膨らんだ。かつて急成長を遂げた時代には競合国を圧倒したものだが、日本は世界にとって「経済成長の模範」から「警告的な教訓」を得る国へと変貌を遂げた。
自民党の安倍晋三氏が2012年12月に首相に就任したとき、デフレを終わらせる意志を表明した。黒田東彦氏を新総裁に迎えた日本銀行には、2%のインフレ目標達成を指示した。しかし、当初の目立った進展の後は、日本経済は一部消費増税が足を引っ張り減速した。今となっては、黒田総裁は物価上昇軌道に日本を戻すことができるのかどうか、その成否に疑念をもつ声も聞こえてくる。
黒田総裁はこうした疑念の声に断固として反論した。10月31日に、日銀が進めている国債購入などによる資金供給量を年間60~70兆円から同80兆円へと増やしたのだ。市場は反応した。日経平均株価が5%上昇、円は2%下落、米株式市場までも記録的最高値をつけたほどだ。
■称賛すべき黒田総裁の姿勢
中央銀行が市場にショックを与えるよう奨励されることはめったにない。この点で、黒田総裁の姿勢は称賛すべきだ。デフレはまさしく「わな」と表現することができる。消費者や企業は、物価が下落すると思えば現金が相当額たまるまで支出を先延ばしにする。この循環は需要を奪ってしまう。弱含みの物価には、自己達成的な力が働く。仮に黒田総裁が自ら設定したインフレ目標を軽んじていたとしたら、市場の信頼が揺らぎ、黒田氏は市場に打ちのめされる可能性を証明することになっていただろう。
このことは、黒田氏の任務には期待の管理が欠かせないという理由から、なおさら重要だ。輸出は日本のGDPに15%しか寄与していない。実際、国内の輸出企業はオペレーションと素材調達の大半を海外拠点に移しているため、少しも円安の恩恵を受けられていない。また、既に利回りが1%を下回る債券の金利低下からも何も得るものはない。これらはどれも、日本がデフレ心理から脱却することで浮上してくる潜在的利益に見合わない。
欧州中央銀行(ECB)と欧州銀行監督機構(EBA)が欧州の大手銀行を対象に実施し、1週間余り前に大々的に公表したストレステストと資産査定はどれほど成功を収めたのだろうか。…続き (11/4)
対話アプリ大手「ワッツアップ」は、4億5000万人のアクティブユーザーを抱えるモバイルメッセージングサービスを築くのにかかった5年間で、ほぼ1億ドルのベンチャーキャピタル資金を使い果たした。…続き (11/4)
各種サービスの説明をご覧ください。