私たちは、連名の「共同署名」をもって、日本政府とロシア政府との間で進められている北方四島をめぐる「日ロ交渉」について、声を大にして「意義あり」と再度表明します。
北方四島(ハボマイ、シコタン、クナシリ、エトロフ)は、サハリン、クリル列島(千島列島)を含めて、アイヌ民族が「アイヌ モシリ」と呼んできたように、アイヌ民族の先住の大地であり、ロシア、ましてや日本の固有の領土ではありません。
江戸幕府と帝政ロシアとの間での「日露通好条約」(1855年)、明治政府と帝政ロシアとの間での「樺太・千島交換条約」(1875年)などで、アイヌ民族、北方の先住諸民族の意志を踏みにじり、一方的に大地を奪い、分割・支配してきたものにほかなりません。
また、サハリンやクリル列島からの強制移住、生活基盤の破壊などによって生命を奪われたアイヌ民族も多数います。その上、先住民族としての権利は、今日まで一切奪われてきました。
日本とロシアが、アイヌ民族や北方先住諸民族にたいして行なってきた苛酷な支配の歴史的事実をみるとき、日本政府、ロシア政府の二者だけで「交渉」を行なう権限などはどこにもありません。日本政府、ロシア政府は、アイヌ民族や北方諸民族の主張をよく聞き、交渉の相手と認めるべきです。その上で、近代以来の侵略戦争・植民地支配を謝罪し、アイヌ民族やウィルタ、ニブヒなど北方諸民族、韓国・朝鮮人にたいして賠償などを行なうことを約束した、名誉ある「平和条約」を結ぶべきです。
アイヌ民族は、これまで事あるたびに、幾度となく「北方四島は日本、ロシアの領土ではない」、「アイヌ民族を無視した領土交渉を中止せよ」などと主張してきました。92年5月8日には、エリツィン・ロシア大統領とフョードロフ・サハリン州知事(当時)にたいして、「北方四島の領有権はアイヌ民族にある」旨を「アイヌ・モシリの自治区を取り戻す会」(山本一昭代表)は文書などで申し入れてきました。また、昨年(98年)4月には、「共同声明」をもって私たちの主張を表明してまいりました。
こうした活動の結果、北方四島の島民、サハリン在住のロシア人学者たちのなかからも「北方四島を含めて、サハリン、クリル列島は、アイヌ民族、北方諸民族の先住の地」「アイヌ民族に漁業権を返すべき」「自由往来の権利を認めるべき」などの声が年々たかまってきています。
日本人労働者や市民、学者のなかからも、日本政府の「固有の領土」論を批判する声もあがってきています。根室など漁民の中からも、「島を日本に返したら、自然は破壊され、豊かな海は死んでしまう」と危機をつのらせ、アイヌ民族の漁民は「島と海をアイヌ民族が守らなくてはならない」と主張しています。
アイヌ民族は、北方諸民族、ロシア人、旧島民(日本人)が本当に対等・平等に助け合って生きることができるようにするべきと、主張してきたのです。こうしたアイヌ民族の声をこそ、日ロ両国政府は即刻受け入れるべきです。
以上のべてきたことを基本にして、次のことを要求します。