アリババ天井
なぜ米国金利が上がらないのかという謎に、人々は思いを致すべきであろう。
既にマーケットは数カ月にわたり、来年第2四半期にはFRBが金利を上げることになるだろうと信じている。
不思議なのは米国長期金利が、まったく上昇しない。10年物の財務省証券の利回りは1月に3.05%の高値を付けて以来、ステディーに低下してきている。8月には2.30%あたりまで低下、その後2.67%まで金利上昇となったが、再び金利低下、10月9日には2.27%までの安値を見ている。
来年の第2四半期にはFRBの金利上げがあるにしては、明らかに長期金利の動きがおかしい。本当に来年に金利が上昇するなら、長期金利はとっくに3%を超えているはずだ。
99%の市場参加者が当然のように来年の米国金利の上昇を見ているというのも異常である。
こうした利上げの予測は、もっぱら失業率の改善や非農業雇用の増加の数字から見た景色である。雇用の改善が景気の上昇につながるためには、雇用改善の結果、人々の消費活動がそれによって活発化するというフォロースルーが必要である。しかし消費活動は、雇用が示唆するほど盛り上がってこないところに問題がある。
今の米国経済を見ていると雇用が重要ではなく、消費が重要だということが分かってくる。
にも拘らず、もっぱら雇用の改善をはやして金利上げを予測するというのは違うだろう。
したがって、長期金利が上がらないで下がる現象の背景には、米国経済は金利を上げるような状態にはないとマーケットが言っているのである。
マーケット参加者はマーケットを観察することなく、誤ったロジックで金利上げ の結論を導いてきたのである。
マーケットをバイアス(偏向)なしに素直に見る目を持つことが重要である。
もしバイアスなしに今の金利の動きをみるならば、米国はデフレ不況の前夜ということになるのではないか。FRBもそれを懸念して、連邦公開市場委員会の議事録に見られるように、世界経済の減速、ドル高の進行を米国経済に対するリスクと認識する流れに入ってきているのではないか。要はFRBは金利の引き上げに追い込まれないように、スタンダードをどんどんハト派の方向にずらして行っているもののように見える。今月に入ってからの米国株価の乱高下は確かにFRBの神経を逆なでするものだろう。
9月19日の米国株価最高値を記録した日はアリババの新規上場の日であった。
中国のインターネット・ショッピングの大手会社とは言えマーケットの盛り上がり方は異常で、アリババの時価総額24兆円はトヨタの23兆円を超えた。
当日のNYダウ高値17,350ドルは構成の歴史家にアリババ天井と呼ばれることになるだろう。