あざなえるなわのごとし

ネット事件から妄想まで雑食

資本主義の学園マンガ 梧桐 柾木「市場クロガネは稼ぎたい」

市場クロガネは稼ぎたい 1 (少年サンデーコミックス)

少年よ大金を抱け?学園マネーゲーム開幕!

私立・学円園学園。ここは一風変わった教育システムを基としている。
それは…学園内で稼いだ”金”が進級・卒業・就職の全てを決める、というもの! このシステムで実社会へ有用な人材を送り出しているのだ。
そして今この学園に、1人の少年が降り立った。その男の名は市場クロガネ! 財閥御曹司でありながら、自らの力を試しにこの学園へ入学したのだった……働く女のコが盛りだくさんの、学園マネーゲーム開幕!!

「なんとなく蓬莱学園思い出すわ~」と思うのは一定年齢層以上だろうが、学園がひとつの国として機能していてその中では一般世界とは違うパラダイムによって支配されている、という設定はちょこちょこ見かける。
”学園もの”という形式に導入しやすいからなんだけれども。







学園の秩序

市場クロガネは稼ぎたい(2) (少年サンデーコミックス)
たとえば普通の学校で言えば、成績が優秀、スポーツが出来る→上位。

しかし学園モノには、独自カーストが適用できる。
今度アニメ化する「食戟のソーマ」には料理と言うテーマがあるが、料理が上手ければ=学園内で上位、というスクールカーストの上辺。

不良もの→喧嘩が強い→上位。
魔法学科→魔法の能力が高い→上位。


学園ものは、ひとつの秩序によるカーストがあり、そこへ転校生や新入生など外からの新しい力が入ってきてその秩序(パラダイム)を変える、のし上がると言うのが王道。
この「市場クロガネは稼ぎたい」も同じ。
ただ少し変わってるのは学園にも拘らず資本主義が存在する、というところ。
※ちなみにちはやふるなど部活動モノは学校自体の秩序ではなく、部活動から敷衍したそのスポーツや部活のルールの中での競争原理での闘いが主

否モラトリアム

市場クロガネは稼ぎたい(3) (少年サンデーコミックス)
現代日本の社会は資本主義だが、主人公 市場クロガネが入学する私立・学円園学園も資本主義で支配されている。学円園学園でのみ通用するローカル通貨によって自治されており、言わば社会の箱庭の中で学生らは資本主義を学ぶということになる。
破産すれば学園から追い出される。

社会での破産はバッドエンドだが、学園での破産は社会への復帰を指す。
当然、現実よりは優しい。
学校とは、あくまでも学ぶ場所。
学円園学園は、バカでかいキッザニア


通常、学生と言うのは社会の競争原理とは別のモラトリアムに守られている。
世間での金稼ぎに煩わされずに学べるように学校という存在がある。
市場クロガネは稼ぎたい 4 (少年サンデーコミックス)
しかし、この学円園学園は資本主義。
統治する民主主義で選ばれた政府(生徒会)が存在し、独自の貨幣が流通し、警察に相当する権力すら存在する。
政治や社会、金などすべて社会と同等の(規模がミニマルなために一般社会よりもシンプルな)資本主義が支配していて、学園と言うよりも一国と言う方が近い。
学園という名前の資本主義の国に入った主人公がその学園の社会の中でのし上がっていく。

にしても、授業シーンや教師がほとんど出てこないのは、もう学校という設定が有名無実。
課外の部活動がメインで授業なんて全然やってない。

人材派遣

連休中に電子書籍で一気に読んだんだけれども、これは面白い。
徐々に作者の知識が増えて言ってるのも解るしw
市場クロガネは稼ぎたい(5) (少年サンデーコミックス)
資本主義をあえて学校規模でやる理由は単純に社会ルールの規模をコントロールしやすいからという面もあって、たとえば学円園学園には株が存在するので部活が上場するのだけれど、本来の厳しい上場基準も学校なので独りの卓越した審査官を納得させればよい、という独自ルールを盛り込んで、上場を容易にする。
パラダイムシフトが容易だし、さまざまなスケーリングをコントロールしやすい。
この作品なら「生徒会」が最高権限なのでどのような秩序もすぐに変えられる
他の作品なら「学園長」「校長」が最高権力で理不尽を吹っ掛ける場合が多い。


主人公の特性を生かした人材派遣(金色の目で仕事の適性を見抜く。誰かの短編小説にもあったな……)は、確かに儲かりそうな分野なんだけども、とはいえ人材派遣がブルーオーシャン既得権益が無い(あったらそこで別展開になってしまうから難しいが)ところへ主人公が乗り出し、勢力を拡大し、途中からライバルが登場する(しかも資本に物を言わせて力技で戦う)展開は...まぁ、マンガなので。
もし既得権益(大手派遣部)との戦いになるとゼロから果たしてどこまで独自性を出して戦えるかって展開になってしまうので筋が変わるんですよねー。
なので仕方ない。

上場し、借金を全部返したってのは、これからの表の生徒会に対し動き始める闇の”地下部活動”に”地下生徒会”となにやらダーティーな展開への布石なんでしょう。
借金背負い込んだ設定は、なんだかんだ初期とvs覇我カズト戦以外はそれほど機能してなかったような気がしなくも……。


現在紙のコミックは六巻まで刊行(電子書籍なんで待ち)。
早く電子書籍で出ねーかしら。

裏サンデーなので試し読みも出来る。
気になったらどうぞ↓

裏サンデー | 市場クロガネは稼ぎたい
かなり面白いのでお勧め。


橘玲とかわかんねーよ、マネーもの?何それ?
財務諸表読めねー、PBR?ほへ?
みたいな人の入門にはいいかもしれない。

もし子供がいたら読ませたいなー。
市場クロガネは稼ぎたい 6 (少年サンデーコミックス)