9月のベネズエラ戦で代表初ゴールを決めて喜ぶ武藤。端正な顔も、おじいちゃん譲りだ 【拡大】
日本サッカー界に彗星(すいせい)のごとく出現した武藤。脚光を浴びても、丁寧な言葉遣いや受け答え、礼儀正しさは変わらない。謙虚さを忘れず、進化を続ける22歳には「心の師」がいた。
「かつて小泉元総理は『人生にはまさかという坂がある』と言ったけれど、その通りです。こんなことがあるのかと」
そう切り出したのは祖父・中野成章(よしあき)さんだ。孫と同じ慶大卒で、現在はスイミングスクールを運営する会社を経営。東京・千代田区の社長室を訪れると、笑顔で迎えてくれた。ちょうネクタイ姿が粋で上品。産経新聞記者としての東京五輪取材や、日本水連で役員を務めてきた経験で、武藤にさまざまな助言を与えてきた。
「(周囲に)持ち上げていただくのは結構ですが、何かあったときにパッと手を離されると、下にドンと落とされる。それを覚悟しておけと言っています。一つのスランプ、一つの行動でも、すぐ叩かれる方に回る」
祖父は新聞やテレビでの武藤の言葉を一言一句チェックする。代表初得点を挙げた9月のベネズエラ戦後も厳しかった。