どうも、タソガレです。本日の記事では今年開催された同人誌即売会「コミックマーケット86」にて頒布した『Planeswalker 2014年8月号』の特集「偽造問題を追え!カードショップ晴れる屋インタビュー」を以前告知させていただいた通りWEB版として再編集の上で公開させていただきます。リンクや画像拡大の点で同人誌版よりも利便性が向上していると思われますので、来年の4月に国内レガシーグランプリを控える今、より多くの方に目を通していただければ幸いです。
また次回「コミックマーケット87」に幸運にも当選することができました(月曜日東地区サ-52a)。再びササキさんと二人で参加する予定ですので、どうぞよろしくお願いします。詳細は後日発表させていただきます。
掲載にあたりまして、インタビューを快く引き受けてくださったカードショップ「晴れる屋」様、及びトレードチームの岩田太様に、この場を借りてもう一度お礼申し上げます。
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コミックマーケット86発行『Planeswalker 2014年8月号』
特集記事「偽造問題を追え!カードショップ晴れる屋インタビュー」より
2014年7月22日、マジック:ザ・ギャザリング公式サイトにて中国産偽造カードの製造拠点を押さえたとの記事が上がった。ウィザーズ社が様々な対策に乗り出す中、我々個人はいったいどのような方法で身を守ればいいのか。業界の第一人者、カードショップ「晴れる屋」トレードチーム所属岩田太氏に詳しい話を伺った。
――本日はお忙しい中取材をお引き受けいただきありがとうございます。早速ですが昨今のカード偽造問題についてお伺いさせていただきます。
よろしくお願いします。
――カードの偽造、というのはいつ頃からあるものなのでしょうか。
――当時の《Black Lotus》は、相場としてはいくら程度だったのでしょう。
ベータのものでだいたい8万円くらいだったと記憶しています(※現在価格はニアミントクラスで100万円以上)。他のパワー9では偽造のリスクに見合うだけの価格は付かなかったでしょうね。一応黒枠の《Time Walk》やMox系はあったという話を聞きましたが、実物をこの目で見たのは《Black Lotus》だけです。
――なるほど、昔の偽造品は高額カードに絞られていたんですね。しかし最近では数万円という金額が付かずともある程度の金額のものであれば偽造が出まわると聞いています。
高額かどうかというよりも、現金化の容易さが近年では重視されているようです。昨年から今年にかけての中国での偽造事件[*2]もそうで、秋葉原などに一部が流れてきたという噂を聞きました。その時に作られたものかどうかは不明ですが、当店でもサンプルをいくつか所有しています。左側が偽造品で、右側が本物のカードです。
――見事にモダン需要のあるカードばかりですね。これらの特徴を教えて頂いてもよろしいでしょうか。
まずは周囲の黒い枠の幅が違います。見ていただければわかると思いますが少し太めですね。次にフォントも正規品と異なります。アポストロフィー(’)が特徴的なので比べていただければすぐにわかると思います。文字間の感覚も偽造品は広めですね。マナシンボルも小さめです。
――偽造というのはカードを丸々スキャンして印刷するものではないんですね。
そういった類の偽造品も存在はするのですが、スキャン品だと解像度の劣化や色合いの変化がどうしても起こってしまうので、改めて作り直す方法を取ったものと思われます。他にも、そうやって作られたものを判別する簡単な方法があります。カード裏面の左上を見ていただけますか。
こちらが正規品で、
――確かに。正規品には左隅に白い模様があり、偽造品にはないようです。
ここも偽造カードを見極めるためのポイントの一つとなります。もちろんこの事実が偽造側に伝わってしまえばすぐにでも使えなくなる見分け方ではあるのですが、今回の中国産偽造カードを見極める手段として現段階では非常に有効です。
――その他の偽造方法について教えて下さい。
まずは新しい紙にインクを刷って作る印刷系ですね。これは表面の作りは非常に精巧なのですが、裏面にはやはり先ほど指摘した白い模様がありません。質感も本物とは程遠いものになっています。カードの角もアルファカットに近いものになっていて、丸みが強いです。ただこれに関しては当時の正規品のカットの甘さもあるので決め手にはなりにくいですが。次に貼りあわせ系です。表面はカラーコピーなのですが、裏面は本物を使用しているので先ほどのような見分け方が使えないので注意が必要です。表面の用紙に正規品に近いものを使われると、判別がより付きづらくなります。
――裏は本物、表も精巧な偽物となると店舗側も真贋の判定が難しいのでは?
そうですね、なのでこういった場合にはこの電子天秤を使います。偽造品は重さが正規品と違うので一発でわかりますよ。電子天秤は最近すごく安くなっているので、高額な商品を見分けたいという方には非常におすすめの方法です。小数点以下が下2桁~3桁まで表示されるものであれば、十分判別が付きますよ。
――簡単かつ精度の高い見分け方ですね。
ですね。これが正規品の《Savannah》で、
これが偽造された《Savannah》です。
正規品は昔からおおよそ1.7グラム台なのですが、この印刷系の偽造デュアルランドは1.6グラム台とわずかですが軽くなっています。
貼り合わせ系だとほぼ確実に重くなりますので、このように1.9グラム台まで行く場合もありますね。
――他にも貼りあわせ系の偽造を判別する方法はありますか?
ライトを当てればさらに詳細な判別が可能です。iPhoneの「懐中電灯」などの常時フラッシュを点灯させるアプリでも十分確認ができますね。マジックは製造の過程でカードの表紙と裏紙の間に青い紙を挟むので、ライトを当てることによってその模様を浮かび上がらせるのです。本物だと挟まれた紙によってこのような青い縞模様が見えるのですが、
偽物だと紙が入っていなかったり、
そもそも光自体が通りづらいものがあるのが分かります。
――確かに。浮き上がる模様が正規品とは全く異なります。
他にも間の抜けたものがあって、この《変わり谷》なんてその類なのですが……。
――あ……エキスパンションシンボルがありませんね。ただ、それ以外は本物と見分けが付きません。
知っている人が見れば一発でわかってしまうお粗末な偽造です。しかし印刷のクオリティは他の偽物に比べるとずば抜けて高い。
――マジックに詳しくない贋作者にも「ローリスクな商材」という認識が広まっているということでしょうか。
そうかもしれませんね。なので今回の『基本セット2015』[*3]でウィザーズ社も本格的にホログラム処理という形で対策に乗り出したのでしょう。
――ホログラム処理の偽造は可能なのですか?
手間とコストはかかると思いますが、あらゆる手段を駆使すれば偽造は可能だと思われます。ただ今回の一番の目的は偽造に対するハードルを上げるためのアピールをすることだと思いますね。
――「偽造は難しいから、うちの商品に手を出すのはやめろ」と。
誰しも危ない橋は渡りたくないでしょうから。
――これで偽造はなくなるでしょうか。
いや、完全に偽造がなくなることはないでしょうね。お札を勝手に刷ればどこの国でも重罪ですが、それに比べるとリスクは低いですから。また現在高額で取引されている昔のカードにホログラムはないので、同じような事件が起こる可能性は残っているでしょう。
――残念なことです。そうなると、プレイヤーが確実に正規品を手に入れるにはどうしたらよいのでしょう。
やはり信頼できるショップから購入するというのが一番だと思います。あとは正規品かどうかを逐一チェックするクセを付けられるといいですね。偽造品はどこか抜けている可能性が高いので、紙質・重さ・カット・フォントなどあらゆる要素を多角的に観察すれば、そうそう騙されることはないはずです。他にはできうる限り日本語版のカードを買うことですね。様々な偽造カードを見てきましたが、主に偽造の対象になっているのは最も流通量の多い英語版なので。
――それでは最後に。もし誤って偽造品を入手してしまった場合、どうすればいいのでしょうか。
ショップや取引相手などに連絡して返金や返品を求める、といったごく当たり前のことしかできないでしょうね。それでも最終的に手元に偽造品が残ってしまったのであれば、当店でも再発防止や注意喚起の為の展示見本を収集しているので、可能であればそちらに加えさせていただきたいです。
――手に入れることがあれば、すぐ持って行きたいと思います。本日はお忙しい中ありがとうございました。
ありがとうございました。
注釈
1.パワー9/Power 9マジック黎明期に存在したあまりに強力な性能を持つカードの総称。《Black Lotus》《Ancestral Recall》《Time Walk》《Timetwister》《Mox Pearl》《Mox Sapphire》《Mox Jet》《Mox Ruby》《Mox Emerald》 の9枚からなり、その性能と希少度からどれも高額で取引される。
2.中国での偽造事件
昨年から今年の始めにかけて中国企業Shenzhen Wangjing Printingにて「顧客の依頼」という形で多くの偽造カードが作られ、出回った事件。その大部分はスタンダードやモダンで需要があるカードであり、大抵の偽造品は古いカードだと考えていた多くのユーザーにショックを与えた。現在はウィザーズ社の勧告によって該当商品の製造を停止している。
3.基本セット2015/Magic Core Set 2015
カード枠やフォントを一新するなど新たな試みがこれでもかと盛り込まれた2014年7月発売のセット。これ以降、レア以上のレアリティを持つカードには偽造対策としてカード下部にホログラム加工が施されるようになった。
《コメント/Comment》 紳士的でユーモラスな投稿を心がけましょう。
コメント一覧
レガシーでも遊びたい気持ちもあるが
バレたら失格どころじゃすまないだろうな。
いつかは自分もああいう高額カードを使ってみたいという気持ちにはなる……。
偽造されたものと知った上で使うのは嫌だが、持っていないプレーヤーからするといつかは使って見たいと思う。ごう慢だろうか。
もちろん偽造主に知れわたれば対策をするようになるだろうけど、その分偽造が難しくなるということだし
親切なショップだとケースから出して目の前で本物である事を証明してくれるよ
×PSAまで偽造
○多くのカード鑑定サービスは状態の良し悪ししか見ない(真贋を判定しない)ので保証にはならない
結構ヤフオク使ってるからこの記事見た瞬間冷や汗出たわw
レガシーに手を出す人は大変だな
何かしら公式で対策できないもんかね
怪しければ失格とすると、競技レベルの高い大会ほど「難癖合戦(俺が負けた相手は偽造っぽい。調査しろ)」になるのでは?
そしてそれはマジックなのか?
っていう競技としてのMTGのあり方に響いてくるんだよね
金払ってるんだから、傷物送ってくるのは止めて欲しい
在庫を空にしたい気持ちは分かるけど
晴れるやはファミコンくんを見習って欲しいね