社員の発明(職務発明)の特許の権利は社員、企業のどちらのものか−。ノーベル物理学賞に決まった米カリフォルニア大サンタバーバラ校の中村修二教授が一石を投じた日本の特許をめぐる問題に結論が出た。特許庁が10月、企業での発明に対する特許権を従来の社員から企業のものに変更する一方、発明した社員への報奨を義務づける双方の立場を尊重した方針を提示した。ただ企業が十分に報いることができなければ人材の海外流出を招きかねない。企業も社員の研究意欲を減退させない報奨対策の見直しを迫られそうだ。(板東和正)
「日本の会社で発明したとしてもボーナスをもらうだけだ」
10月7日(日本時間8日)、ノーベル物理学賞の受賞発表後にサンタバーバラ校で開かれた記者会見で、中村氏は喜びの言葉とともに、社員の発明に正当な報奨金を支払わない日本企業への不満をあらわにした。“怒り”の根底にあるのは約13年前に自身が、勤務先だった日亜化学工業(徳島県)を提訴した開発者の権利をめぐる訴訟合戦だ。
原因は、米国の学者から「スレイブ(奴隷)ナカムラ」と呼ばれるほど低かった発明報酬の低さにあった。
中村氏は、日亜化学に勤めていた平成2年に青色発光ダイオード(LED)の製造装置に関する技術を開発。日亜化学は特許出願後、青色LEDの世界初の製品化に成功した。この製品化が飛躍のきっかけとなり、売上高は2年の200億円弱からが14年には5倍以上の約1160億円と急成長を遂げた。にもかかわらず、中村氏が手にした日亜化学からの報奨金はわずか2万円。米国人の研究者からみると「企業の奴隷」だったのだろう。
copyright (c) 2014 Sankei Digital All rights reserved.