

ダイトー水産の養殖場では、通常ハウスを併設し、夏から秋にかけて孵化した仔亀を最初の冬だけハウスで冬眠させずに飼育します。翌春からは、露地池で肥育させて出荷までそこで過ごします。成長の早い群は、その年の秋から出荷可能になります。他の多くの群は、冬眠し翌夏にさらに成長します。
温泉や、年中ハウスで飼育する養殖場では、1年で全てのすっぽんを出荷してしまうようです。これでは、品質に少し問題があっても当然でしょう。


●立地環境
すっぽんは、日光浴が非常に好きで欠かすことのできない彼らの健康管理です。従って、日光浴ができる静寂な環境と日照環境が重要になります。山間部や年中ハウス飼育の欠陥が、ここにあります。
弊社養殖場のある遠州灘海岸地域は、この点について最高の立地を備えています。

●池の品質
※池の環境を最適な状態に整えています ※露地を使用した出荷育成をしています
誰が言い始めたかは定かではありませんが、「すっぽんは泥が良い」とは、とんでもない話です。業者によっては、汚泥で飼育することこそがすっぽんの養殖だと思っている方もいるようですが、天然のすっぽんが汚泥を住処にしていることは決してありません。
泥質は、すっぽんや池自体が排出するヘドロと一体化し、池を急速に老朽化させます。湖を仕切ったり、日陰の山間部の田んぼを改良した露地池では、池底が汚泥かした池を干すことができず、良い製品を長期にわたって供給することは難しくなります。
弊社では、キメの細かな砂地で育成し、毎年排出されたヘドロを除去することにより、すっぽんが心地よく生活できる環境作りを心掛けています。
尚、黒い汚泥の中で育ったすっぽんが、その保護色により背が均一に黒く(汚水色)、腹は白くなったものを良品とする見方は間違いです。汚泥が少なく日光をよく浴びたすっぽんは、暗緑色〜茶褐色で、個体により色の濃淡もあります。この色の差は、すっぽんが保護色に染まろうとする生態的特徴であり、色柄の違いで味は変わりません。

●飼育密度
※適度な密度を保って育成しています
効率や経済性を追求するあまり高密度養殖が横行しますが、すっぽんが並外れて神経質な生き物であることを知る必要があります。適正を超えると、すっぽんは正直に反応します。池の能力にもよりますが、マックスキャパシティーを5〜6kg/m2程度に抑えた計画育成が必要です。
●飼料
※良質な餌のみを使用しています
すっぽんの飼料は、基本的に養鰻の飼料が応用・利用されています。ここでも経済性を追求するあまり、低価格の飼料を使用するケースが多く、その場合にトラブルが多く見られる傾向にあります。高価な餌は、魚粉の質にも量にも富んでおり、少なめの餌で成長させることができます。一方、安価な餌は、澱粉が多く、魚粉ミールの質は良くありません。そのため飼料効率が悪く、池の中に落ちる餌の量も少なくなく、結果的に池を汚してしまいます。品質の低下も避けられません。これは、効率の考え方を見誤っているケースといえます。程度の悪いケースでは、鯉用の餌を使用している養殖場も有るようです。

●4月上旬
露地池で冬眠しているすっぽんが目覚め始め徐々に活動的になります。

●5月
ぼちぼち餌を食べ始めます。
●6〜8月
この約3ヶ月間、親亀が産卵を繰り返します。1匹の雌が2〜4回に分けて産卵場に上陸して産卵をします。その数は、50〜100個。

●8〜10月
有精卵を選別し、孵化場で40〜60日かけて孵化させます。この8〜10月にかけて集中して孵化します。
孵化した稚亀は、温度管理されたハウス池で数度の選別池替えを繰り返し、翌年4月まで飼育されます。4月には平均300gに育ち、露地の池で食欲旺盛な夏場を過ごしスクスクと成長します。

●10〜11月
食欲が低下し始め、水温が10度前後になる11月に入ると、餌は食べず冬眠の準備に入ります。この時期のサイズは、成長の良い個体は800〜900g、成長の遅い個体は400〜500gで、肉質が締まり、早い個体は、前年の900g以上になったものとともに出荷されます。

●11月〜春
実質の冬眠は、11〜4月までの5、6ヶ月です。つまり、1年の半分を池の底で眠っているわけです。
このようなサイクルの中で、産卵させる親亀は4〜5年の飼育で3kg以上に育てて産卵専用の池に放養します。
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