きょうのコラム「時鐘」 2014年11月4日

 近ごろの流行語は理解するのに骨が折れる。人気の「ハイレゾ音源」というのも、さっぱり分からない

「ハイレゾリューション(高解像度)音源」の略語だそうで、分からなくても暮らしに支障がなさそうだから、気にしないでいる。先ごろ、テレビのニュースで若い女性が「マタハラ」と声を張り上げていた。妊娠を理由にしたいじめ・嫌がらせを指すそうだが、きつい語感にドキッとさせられる。別の下品な振る舞いを想像しそうになる

乗り合わせたバスで女学生たちが「カナエキ」と連呼していた。金沢駅のことと察しがついたが、ほかの駅には寄らないバスだから「エキ」の方が短くて済む。言葉をケチるのでなく、何でも縮めるのが若者の流儀。元若者もそれくらい分かるが、近ごろの略語は言葉の響きが美しくない

オレたちのころは、と以前の流行語を思い浮かべたが、「リストラ」「ポケベル」「ドタキャン」など五十歩百歩。略語は使用注意の乱暴な言葉なのだろう

「ハイレゾ」は、生の響きに近づく画期的な音楽とか。音の美しさを自慢し、略語の響きには無頓着。何かおかしい。