絶対に交渉してはいけない相手とは?
人々の99%とは交渉が可能だが、けっして合意を見出せない交渉相手というのが稀に存在するという。①懐柔と挑発を交互に繰り出してくる人、②人間を完全に白か黒かで考える人だ。こうした相手にどう対処すればよいのか、交渉の専門家が4つの方法を提案する。
交渉について専門家が最初に教えるのは、「問題と人間を切り離す」ことである。このアドバイスはほとんどの場合に有効だ。しかし心理学者である私は、全体の1%ほどのケースでは人間そのものが問題になることを知っている。その場合、通常の交渉戦略はまったく役に立たない。どんな状況がこの例外的なケースに該当するのか、その場合にどう対処すべきなのかを、以下に説明しよう。
まず、あなたが交渉しようとしている人物やグループがどのようなタイプかを見極めよう。相手が次の2つのいずれかに該当する場合は、交渉そのものがいかに困難に思えても、交渉をするべきである。
1.感情的な相手
感情そのものは必ずしも、合意に達するうえでの妨げとはならない。だれかと対立している時に強い感情を抱くのは、人間として自然なことである。対立の内容が明らかになり、対処がなされれば――そして双方が自分の言い分を吐き出すことができれば――感情はたいてい収まる。人や文化によっては、感情表現がより率直であることも念頭に入れておこう。また、交渉相手をコントロールするために感情を戦略的に使う人もいる。相手が感情的であっても、それを理由に交渉をやめてはならない。
2.不合理な相手
私たちは、自分の論理や根拠に同意しない相手を不合理だと考えてしまいがちだ。しかし実際には、相手は単にこちらと違うものを問題としてとらえている、あるいは違う事実に立脚しているというケースも多々ある。もし相手のことを不合理だと思っても、互いのギャップを埋めて妥結することは不可能ではない。
しかし、次の2つのタイプに該当する相手とはけっして交渉してはならない。
1.懐柔と挑発を交互に繰り出してくる相手
人は交渉の初期段階では、敵対的であったり、話が通じにくかったりするものだ。しかし合意の目処が立ってくるにつれて、次第に友好的になっていく。
ここで気をつけるべきなのは、次のような人物だ。最初は友好的だったのに敵対的な態度を取るようになり、それならばとこちらが交渉をやめようとすると、また友好的になる。と思いきや、再び挑発してくる――。こういう振る舞いが示しているのは、相手はけっして交渉に満足せず、妥結するつもりがないということだ。このような手合いの望みは話し合いによる合意ではなく、交渉のプロセスと交渉相手を支配することにある。交渉を続けることで得られるメリットがあるにせよ、時間と労力の浪費による損失がそれを上回ってしまうだろう。
2.人間を完全な善か悪かでしかとらえない相手
交渉は利害の衝突を解決する手段の1つであり、過ちを裁くためのものではない。これが理解できればほとんどの人は、利益の獲得という根本的な目的を達成するために、譲歩し合うことを辞さないものだ。
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