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 都内の私立幼稚園で今月、来年4月の入園の願書受け付けが一斉に始まった。少子化で幼稚園の定員は余っているのに、一部の園では徹夜の行列ができた。なぜなのか。

■受け付け、「早い者勝ち」の園

 1日午前4時すぎ、大田区の私立幼稚園。園庭には30人余りが待っていた。入園を希望する保護者たちだ。園側が用意した屋根型のテントが張られているが、全員は入りきらない。ダウンジャケットなど防寒具を着込み、寝袋を用意する人も。小雨が降る中、夜明けを迎えた。願書の受け付け開始は午前10時だ。

 この幼稚園は預かり保育を実施することで人気が高い。願書を出した順に面接が始まり、その場で合否が決まる。事実上、早い者勝ちのため行列になる。

 行列の先頭付近にいた30代の男性は前日の午後6時すぎから並んだ。「会社帰りにのぞいたらすでに何人かいたので、そのまま並んだ。へとへとだが、これで3年間が決まるので仕方ない」

 都私立幼稚園連合会によると、入園者の選考方法は各園が任意で決めている。希望者が定員を超した場合、一般的には、①希望者全員に対し、面接・試験を行う②全員を対象に抽選を行う③先着順に願書を受け付ける④願書の配布数を定員程度に絞り先着順に配る――などの方法がある。列ができるのは③④の園だ。同会の申し合わせで、願書配布は10月15日から、願書受け付けは11月1日からと決まっている。

 ③④で並ぶのを代行する業者もいる。便利屋チェーン・お助け本舗(渋谷区)はこの期間に合わせ、ホームページのトップで「願書の取得・提出に関するお困りごとはお任せください」とうたった。費用は1時間あたり3千円。今年、都内だけで③は約250件、④は約60件の依頼があった。1日は区部を中心に並んだ。増加傾向にあるという。

 担当者は「遠方の幼稚園に通わせる苦労を考えると、見合った価値はあるという判断でしょう。先着順に決める幼稚園がなくならない限り、依頼は続くだろう」と話す。

 大田区の幼稚園で夫と交代で前日から並んだ女性(40)は「入園説明会では並ぶとは聞いていなかった。ママ友から聞いて初めて知った。みんな、情報がないから余計に不安を強めている」。