まだある女性抜擢失敗!――元女子アナ環境政務官は“トンデモ科学”の広告塔

女性の登用を掲げ起用した大臣が次々と辞任に追い込まれた安倍政権。だが、抜擢された女性政務官にも適格性に問題のある人物がいるという――。

9月の内閣改造で、衆院当選1回生ながら環境大臣政務官に登用されたのが高橋比奈子議員(56)だ。岩手1区を選挙区とする高橋氏は、テレビ岩手の元アナウンサー。盛岡市議・岩手県議を経て、前回の衆院選で比例復活を果たした。「祖母の代からの政治家一家で、実父は共産党県議を6期務めた。ただ、自身は自民党から議員になった異色の政治キャリアの持ち主です」(県政関係者)。そんな高橋氏には、県議時代、公費による出張が問題視された過去がある。「高橋氏は、県議初当選から10ヵ月後の2006年、ドイツやイタリアなどを視察しました。公費出張を希望し、経費150万円のうち、当時の上限額だった120万円が拠出されました。しかしその出張先が、彼女がハマっている“EM”という微生物に関するものばかりだった。このため、内容が不適切ではないかと指摘したのです」(斉藤信・岩手県議)。確かに、11泊13日に及ぶこの視察旅行の日程を見ると、EMセンター視察・EM酪農家視察・EM陶芸工房視察など、EMに関するものばかり。さらに、そのほとんどには、『EM研究機構ドイツ事務所』が同行していることが記されている。彼女が公費で視察したEMとは、一体なんなのか。




EMの効用を謳うEM研究機構のHPによれば、EMは《乳酸菌・酵母・光合成細菌を主体とし、安全で有用な微生物を共生させた多目的微生物資材》。琉球大の比嘉照夫名誉教授により、1982年に完成したとされる。「広まった当初は肥料として、農家や家庭菜園をする主婦の間でヒットしました。微生物の力で生ごみを発酵させ、肥料にできるというのが、人気の理由だった。その後、1998年に地球環境共生ネットワーク(Uネット)というNPO法人が設立され、EMによる河川浄化など、環境活動を行うようになりました」(サイエンスライター・片瀬久美子氏)。このUネットで運営委員を務めていたのが高橋氏だ。「彼女の自宅の前にはプレハブがあり、そこでEM菌を培養している。このプレハブは、現在もUネット岩手事務所として使用されています。彼女は市議時代、Uネットの活動で、盛岡城跡のお堀にEMを投入していました」(高橋氏の知人)

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自宅の敷地にはEM培養施設

こうしたEM熱が高じての海外視察だったようだが、帰国後の報告内容をめぐり、もう一悶着があったという。高橋氏は視察報告書の中でこう述べている。《EM処理した粘土は模様が出ていい土になる。【略】EM入りの陶器に種をまけば、2~3日で芽が出てきた。陶芸家もビックリ!!》。前出の県政関係者が言う。「この報告について、ある県議が『EMは微生物なんだから、土を焼くときに死んでしまうはず。陶器にしたときに効果が現れるのはおかしいのでは』と疑問を呈したのです」。そんな周囲の視線も意に介さず、高橋氏はEMの効能を盲信していたという。「EM入りの飲み物を持ち歩き、ご飯にシュッシュッとふりかけていたこともありました」(同前)。2006年にはEM関連の会社まで設立した。高橋氏の自宅を所在地とし、実父が代表を務める『あーす合同会社』だ。民間調査会社のレポートによれば、同社はEM研究機構やUネット岩手が主催するイベントの事務代行などを行っている。高橋氏のEM宣伝は、例をあげればキリがない。2012年の衆院選に向けて公開された高橋氏本人のプロフィールには、こんな記述が。《EMは、世界150ヵ国以上で使われ、地球温暖化の対応も可能なすばらしい資材です》。同じ年に出演したラジオ番組では、こう発言した。「EMを活用する農家では、土には放射性物質が検出されても、作物には全く出ていない。EMが色んなことに対応できるという最新情報は、EM関連企業やUネットのHPで、イベントの告知が見られます。ぜひ覗いてほしい」(『LOVE&PEACE 同じ空の下から』7月18日放送)

果してEMには高橋氏の謳うような効果が本当にあるのだろうか。EMの開発者である比嘉名誉教授は、EMの除染効果をこう説明している。《光合成細菌が放射性元素のエネルギーを転換的に活用した結果、放射能が消えたとの推測も、あながち荒唐無稽の話ではない》(『甦れ! 食と健康と地球環境』より)。しかし、光合成細菌の専門家は首を傾げるのだ。広島国際学院大学バイオ放射能研究所の佐々木健教授が言う。「光合成細菌に放射性物質を吸着する性質があるのは事実です。しかし、放射性物質を取り込んで、別のエネルギーに変換するなんてことは、考えにくい。数年前に市販のEMを調べたことがあります。そうしたところ、光合成細菌は見当たらなかった。EM研究機構の話では菌の遺伝子はあるそうです。死んだ菌でも遺伝子は残るので、EM生成のどこかの時点で菌がいたのは事実なのでしょう。しかし、死んだ菌は働けないので、効果がない」。光合成細菌についてEM研究機構に見解を求めたところ、こう回答した。「製品の品質管理の工程で(菌の存在を)確認し出荷しております。遺伝子をターゲットとした手法で菌数を確認した研究結果が公表されています」。だが、佐々木教授はこう疑問を呈する。「『EMに光合成細菌が含まれている』というのは、一般の方々を惑わせる非科学的な発言だと思います」。高橋政務官がご熱心のEMは、専門家が見れば“トンデモ科学”と言われても仕方のない代物だったのだ。

さらに、高橋氏が熱心に活動していたEMによる河川の浄化についても、効果どころか、逆に汚染の原因になり得るとの指摘もある。福島県生活環境部が2008年にまとめた資料によると、EMなどの微生物資材を、《河川や湖沼に投入することは、水質汚濁につながるおそれが高いので、慎むべき》とされているのだ。EMの効果について、小誌記者が高橋氏に尋ねると、「農業とかでも良い効果もいっぱいあるし、海外は農業ですっごい使われてるよ。それも(視察で)見たし」。一方、除染については、「わからなーい! そういうことは! 私に聞かないでー。私は(除染の)現場行ってないから。自分が現場行って全部実証したものはいくらでも言えるけど」。だが、彼女は国会議員となってからも、EMの効果を宣伝し続けている。「EM関連のイベントに精力的に参加するほか、昨年末には、新設された“有用微生物利活用推進議連”の事務局長に就任しています。政務官起用は、『とにかく女性』という官邸の意向があった。人物本位ではなく、女性ありきだったため、ろくな身体検査もなく抜擢されました」(政治部記者)。地球温暖化はもちろん、高橋氏がEMに効果があるという除染対策も環境省の所管。“トンデモ科学”の広告塔に、環境政務官としての資格はあるのか。


キャプチャ  2014年10月30日号掲載


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