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原発再稼働の本当の理由:政府自民党が原発廃止を決断できないのは、原発の核抑止力

»2013年2月27日
白熱のディベート教室

原発再稼働の本当の理由:政府自民党が原発廃止を決断できないのは、原発の核抑止力

あいだ・たかを

日本は既に国際社会と関わらずには社会・企業活動が出来なくなってきました。この激動の時代、国際化された社会を生き抜くためにはディベート教育が必須と考え、啓蒙活動に励んでおります。

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原発問題を考える時に、始めに浮かぶ疑問は、何故原発をどうしても再稼働させようとしているかです。

原発再稼働を求める声は、産業界、電力会社、そして政府自民党の3つのステイクホールダーから挙げられております。


始めに、産業界が原発再稼働を望むのは、理解できないこともありません。電力料金の引き上げを止め、原発ビジネスを再始動する必要がありからです。

一方、何故電力会社が原発の再稼働を願っているのでしょうか?

燃料追加コストは電力価格に転嫁できるので、コスト高は本質的な理由にはなりません。

前回では、衆議院議員 河野太郎氏の、再稼働させないと電力会社の経営が破綻に直面するからだという見解を紹介しました。

すなわち、再稼働をせず廃炉を決定すれば、北海道、東北、東京の各電力会社と日本原電は債務超過になる。残り各社も純資産を大きく減らすことになり、23年度同様の赤字を出せば、債務超過になる可能性が大きいということです。

同様の考えを持っているのが、経営コンサルタント小宮 一慶氏です。

小宮 一慶氏によれば、もし、原発を全廃することになりますと、この「原子力発電設備(7241億円)」と「核燃料(8343億円)」の合計約1兆5500億円を減損処理しなくてはならない。減損額があまりにも膨大であるため、電力会社としては何とか原発を再稼働させたいと思っているというのです。


では、産業界及び電力会社が再稼働を望むのは理解できるとして、政府自民党が廃炉に積極的でないのは何故でしょうか?

こうした疑問について、答えるのが、元・早稲田大学政治経済学術院 客員教授で技術ジャーナリストの西村吉雄氏です。


西村吉雄氏によれば、 その秘密は、使用済み核燃料を再処理することで取り出せる「プルトニウム」が、核兵器の材料になるからだというのです。

なお、西村吉雄氏は、東京工業大学博士課程修了、日経マグロウヒル(現日経BP)入社。「日経エレクトロニクス」編集長、日経BP社発行人、編集委員など歴任。東京大学大学院教授などを経て、現在は早稲田大学大学院ジャーナリズムコース客員教授、東工大学長特別補佐として活躍しております。


出典:週刊ダイヤモンド 原発大国ニッポンが「廃炉大国」になる日

西村さんの言うとおり、人口減少時代を迎える日本が将来、エネルギー不足に陥る危険性はそう高くなさそうだ。当面の電力ピークも、火力発電や天然ガスなどを使えば、節電でどうにか乗り切ることは可能だろう。そのことは、3.11後、すでに実証済みだよね。

 じゃあ、どうして国はそこまで原発にこだわるんだろう?一般に言われているように、コストが安いエネルギーだから?

「そんなことはありません。発電コストは低めでも、建設費はべらぼうに高い。原発の建設費が高いのは、すでにニュースや新聞で報道されているように"総括原価方式(そうかつげんかほうしき)"という料金の設定方法をとっているからです」

 総括原価方式では、資産の大きさに比例して、電気料金を決められるようになっている。具体的に言うと、発電所の土地や費用、使用済み核燃料などの「特定固定資産」に3%をかけたものを、人件費や燃料代などの原価に加え、電気料金収入を算出する仕組みだよ。つまり、高い費用をかけて作った原発を持てば持つほど、電力会社にはお金がたくさん入ってくる、ってことだ。

 なお、立命館大学の大島堅一教授の研究によれば、原子力の発電コストは水力よりも高く、火力よりやや安いことがわかっているよ。

 もうひとつ、注目したいのは「使用済み核燃料」が、電力会社の資産として扱われていること。

 「使用済み核燃料、つまりウラン燃料の一部は、青森県の六ヶ所村で"中間貯蔵"されています。これを処理すれば、もう一度、原発の燃料として使える可能性のあるウランやプルトニウムを取り出すことができるからです」

 再処理すれば、ウラン238という物質も取り出すことができる。そのままでは使えないが、プルトニウムと一緒に燃やすことで、核燃料として使えるプルトニウムに転換することが可能だ。使用済み核燃料、つまりゴミを再処理して再び燃料にする――この夢のようなサイクルを可能にするのが、高速増殖炉「もんじゅ」だ。

 「つまり、使用済み核燃料は、将来、利用することが可能だというので、"資産"として扱われています。もし廃炉にしてしまえば、使用済み核燃料はただのゴミと化してしまい、電力会社は一気に資産を失ってしまうわけです」。

 もっとも、もんじゅは1995年にナトリウムが漏れて火災が発生。2010年に運転を再開するも、またもやトラブルを起こし停止したままだ。1950年代頃は欧米も高速増殖炉に高い関心を寄せていたけれど、ちゃんと稼働させるのはあまりに難しく、どこもやめてしまった。いまだに保持しているのは日本だけ。また、六ヶ所村の再処理工場も、まだ本格的な稼働はしていない。

電力会社が廃炉を嫌がるのはわかるとして、国が廃炉に積極的でないのはなぜだろう?

 その秘密は、使用済み核燃料を再処理することで取り出せる「プルトニウム」にある。なんといっても、プルトニウムは核兵器の材料になるからだ。

 じつは、西村さんたち研究者やジャーナリストは、福島第一原子力発電所の事故を、第三者の立場から調査、分析し、結果を書籍やウェブなどで発信する「FUKUSHIMAプロジェクト委員会」を立ち上げている(活動費用は賛同者の寄付金などでまかなわれた)。

 ところが、過去にさかのぼって資料を調べれば調べるほど、原発問題の行きつく末は軍事問題なのだということがわかる――と西村さんは言う。

 「1954年に保守3党から最初に原子力予算が提出されたとき、中曽根康弘氏ら中心メンバーは『原子兵器を使う能力を持つことが重要』という意味の言葉を述べています。また、1969年にまとめられた『わが国の外交政策大綱』には、当面核兵器は保有しないが、核兵器を作るためのお金や技術力は保っておくべきである、と書かれているんです」

 プルトニウムを保有することの良し悪しは別として、西村さんは「これ以上のプルトニウム製造は、安全保障の面から見ても必要ないはず」と言い切る。

 「すでにフランスやイギリスで再処理し、保管してある日本のプルトニウムの量は、核兵器数千発分に相当します。だから国際的に見れば、日本は"準核保有国"という位置づけなんです」


さらに、西村氏は、世界からみれば、日本は、いつでも、あと一歩で核兵器を持って武装することができる潜在的核保有国の筆頭格であり、原発は潜在的核保有国となるための隠れ蓑だと主張をしているのです。


出典:JBPress 原発は潜在的核保有国となるための隠れ蓑
西村 FUKUSHIMAプロジェクトの執筆作業の過程でいろいろ資料を集めているのですが、調べれば調べるほど「原発」と「核兵器」との関係が浮き彫りになってくる。

 1969年に外務省が「我が国の外交政策大綱」という内部文書を作成しています。2010年にその文書が公開(PDF)されたのですが、そこには「核兵器は当面保有しないが、核兵器を作るだけの技術力と経済力は保持する」との方針が明記されていた。それは、不動の方針としてずっと続いてきたのでしょう。

 だから、「市場経済の観点で、原発は儲からないから撤退する」という選択は電力会社には許されなかった。

  原子力発電所の立地する自治体にはさまざまな名目で補助金や交付金が出ていて、あれを勘定に入れれば、原子力発電のコストはちっとも安くない。でも「あれは国防費です」「経済的なためのお金ではありません」ということになれば、それはしょうがないよねということがウラであったかもしれない。

烏賀陽 米国の大学院の最初の授業で「君たちは、世界に何カ国核保有国があるか知っているか?」と聞かれました。

 「アメリカ、ソ連、イギリス、南アフリカ、イスラエル・・・」と名前を挙げていくと、教授は「実際に核兵器を持っている国とは別に、核兵器を開発可能で、それを飛ばして相手国に打ち込むロケット技術もあるけれど、政治的な判断で核兵器を持たない国がある。それはどこか?」と言うのです。「もしかして日本ですか?」と聞いたら「そうだ」と。 

日本は衛星を軌道に乗せるロケット技術があり、それは大陸間弾道ミサイルの技術とまったく変わらない。プルトニウムも持っている。核兵器に使うものとは種類が違うけれども、精製技術は応用可能です。

 世界からみれば、日本は、いつでも、あと一歩で核兵器を持って武装することができる潜在的核保有国の筆頭格なのです。僕は教授に「日本には非核三原則がありまして・・・」と必死に説明したのですが「いやいや、政治的意思なんていうものは一晩で変わってしまうのだから、意味がない」とあっさり蹴飛ばされました。日本は核保有国と非核国の中間にある「核保有国1.5」みたいな存在なんですね。 

西村 読売新聞は9月7日付社説で「日本はプルトニウムを利用することが許されていて、日本の原子力発電は潜在的な核抑止力となっている。だから、脱原発してはいけない」と書いた。

 これには驚きました。それは、みんな薄々は感じながらも「それを言っちゃあ、おしまいよ」みたいな暗黙の了解が成立していたことかと思っていたのですが、社説で言い切ってしまった。

烏賀陽 日本非核国の神話の終わりですね。

西村 文筆家の内田樹さんは、講演で「ドイツ、イタリアの脱原発の流れの中で、アメリカは日本にも脱原発してほしいと思っているはずだ」と言っていました。第2次世界大戦の敗戦国の枢軸国3カ国は核クラブから出ていってくれということなんです。

 本当の核クラブは米・ロ・英・仏の旧連合国と中国の5カ国で、これらは国連安全保障理事会の常任理事国です。日本は、これだけの不手際を起こし、世界にご迷惑をかけて、その上、プルトニウムを持っていてテロに狙われたら危なくてしょうがない状態。

烏賀陽 日本の権力の本当の意思が3月11日の大震災を境にむき出しになってきたような気がします。

 読売新聞の9月7日の社説も、「正体見たり!」という感じです。もともと読売は正力松太郎の政治的な野望のために大きくなった新聞。日本が原発を導入する際の、プロパガンダに大きな役割を果たしました。ニュース媒体としてだけでなく、ビートルズを呼んだり、プロ野球をやるのと同じレベルで原子力博覧会とかいうのをやって興行主として原発を振興した。日本を親・原発国にしたことについて、読売新聞の功績は非常に大きい。その文脈で考えると、9月7日の社説は、ある意味、本当に正直になったな、という気がするんです。

 アメリカ側は、読売新聞がいかに日本の権力の中枢の代弁者として機能しているかを知っています。その前提で、アメリカ側にシグナルを送って、出方を見ているのかもしれませんね。

西村 ある時点まではアメリカにとっても日本が潜在的核保有国であることに意味があった。ただ、日本がプルトニウムを作ることに対して、アメリカは何度も何度もブレーキをかけている。青森県六ヶ所村の日本原燃の核燃料再処理工場がいまだに稼働していないのも、アメリカからの圧力が背景にあるのです。

 日本が、国内と再処理を委託しているイギリス、フランスとに大量のプルトニウムを保有している状態を、アメリカが好ましくないと思い始めている。だから、大震災をきっかけに「核クラブから出ていって」というのが、アメリカの本音になってきていると思います。
(中略)
本当のことを言うのはまずいから、これまでは「電気が足りない」とか「エネルギーバランス」とかを強調してきたのでしょう。読売新聞の社説はむき出しに言わざるを得ないところに追い詰められてきたのかという気がします。

烏賀陽 確かに、そういうふうに説明すると、きれいに説明がつきます。官僚機構は暴走機関車のようなところがあって、「これは、いかん」と思っていても、動き出してしまうと誰にも止められない。複数の変数がどんどん増えて、3次方程式、4次方程式になってどんどんマイナスの関数を描いているのが現況じゃないかと思うんです。

西村 高速増殖炉路線は、まさに、それです。今、一番安くて安全な核燃料の処分方法は「使い捨て」です。再処理しない方が安上がり。だから、フランスもイギリスも「高速増殖炉は、もう成り立たない」と断念した。なのに、日本だけが止められない。頭のいい官僚なら、止めるべきだと分かっているはずなのに、誰も「止める」と言い出せない。言い出しかけた人が次々と左遷されているのを目の当たりにして、もう言えないんです。


元外交官で文筆家の、佐藤 優氏も、日本が原発を持っているということは、核兵器を作りうる潜在能力を維持しているということにほかならない、との見解を表明しております。

出典:JBPress 原発は核抑止力、日本は脱原発に踏み切れない
日本に54基もの原発が存在することには、表と裏の理由があります。表の理由は、原子力発電はクリーンに、そして安価に大量の電力を作り出せること。裏のそれは核による抑止力を維持する必要性です。

 日本が原発を持っているということは、核兵器を作りうる潜在能力を維持しているということにほかなりません。

IAEA(国際原子力機関)はしょっちゅう日本に対する査察を行っていますが、それは日本が核兵器を作ろうと思ったら3カ月でできると考えているからなのです。安全保障の専門家の間では、これは常識です。

 時代が帝国主義化している今、善し悪しは別として、核兵器による抑止力を抜きにして安全保障は成り立たないでしょう。米国ではスリーマイル島の事故で原発の開発がストップしましたが、一方で軍事面の核開発はやっています。

 日本の場合、平和利用のためという大義名分なくして核開発をするわけにはいきません。だからこそ日本は、福島第一原発がこういう事態に直面してなお、脱原発に踏み切れないのです。


原発の専門家である武田邦彦氏は、日本はプルトニウムを約29・6トン保有しているが、日本はプルトニウムを軍事転用しないというポーズのために原発でMOX燃料として用いようとしていると指摘しております。


核分裂プルトニウムは5トン 日本原燃の再処理計画
出典:武田邦彦 ウェブサイト とある原発の溶融貫通(メルトスルー)

日本原燃は青森県六ケ所村の使用済み核燃料再処理工場(試運転中)で、2013年度からの3年間にプルトニウムとウランを混ぜた酸化物(MOX)の粉末を約16・3トン製造する計画を立て、9日までに原子力規制委員会に提出した。粉末には核兵器の材料にもなる核分裂性プルトニウム約5トンも含まれる。

余剰プルトニウムに対する国際社会の批判は厳しい。日本は既に約29・6トン保有している上、消費が進まず増える可能性が高いため、批判がさらに強まりそうだ。

再処理工場の完成は今年10月を目指しているが、運転開始はずれ込む可能性がある。

これだけの量のプルトニウムを所有してしまっているので,「日本はプルトニウムを軍事転用しませんよ」というポーズのために原発でMOX燃料を使うのですが,その行為にどれだけの効果があるのでしょう。

例え,その効果が微々たるものであったとしても,憲法を改正するまで再処理は建前としてどうしても必要なのです。

原子力の平和利用って,ほんとに虚しい嘘ですね。


プルトニウム約29・6トンというのは、素人にはなかなか事の重大さは理解できないものがありますので、原爆に例えて考えてみたいと思います。

ちなみに、長崎に投下された原爆(ファットマン)には、約6.2kgのデルタ相プルトニウム合金が使われていたので、単純計算からすれば、約29・6トンでは4,700個の長崎型原爆(ファットマン)が作れる量ということが想定されます。

核兵器開発の可能性を保持するということが、どれほど政治経済に影響力を持つかは、最近の北朝鮮の小型化されたと言われる原爆核実験の報道を見ても理解できるかと思います。



今回は、政府自民党が脱原発に踏み切れないのは、核兵器開発の可能性を維持することであることが、理解出来ました。

次回は、基本的な疑問である「原発が無くなると、電力不足になるのか?」について、検証してみたいと思います。

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