消費税と税収の関係をグラフ化してみる(2014年)(最新)
2014/09/21 16:08
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消費税導入・増税が一般会計税収増につながるとは限らない
一般会計税収の推移は1985年度(1985年4月から1986年3月分)以降は、財務省の【一般会計税収、歳出総額及び公債発行額の推移】で確認、取得ができる。さらに消費税のみの税収は同じく財務省の【関連資料・データ > 租税及び印紙収入額調 > 統計表一覧】、概念の把握は【「税収について考えてみよう」解説記事】で確認ができる。
そして消費税についての日本における過去の出来事「1989年4月1日に新設(3%)」「1997年4月1日に増税(3%から5%)」「2014年4月1日に増税(5%から8%)」を盛り込んだのが次のグラフ。「購買力などを考慮し、消費者物価指数を反映すべきだ」との声もあるが、この数十年間実質的に消費者物価指数はほぼ横ばいなことを考慮すれば、無視できるものと判断する(【過去60年余にわたる消費者物価の推移をグラフ化してみる】)。
↑ 一般会計税収と消費税税収推移(兆円)(-2014年度)
消費税新設直後は税収項目の新設に加え、当時が好景気だった(解説は後述)こともあり、税収は純粋に増加。しかしそれも失速し、2年目からは減収に。3年目以降は一般会計税収が「消費税導入時点より」少なくなる事態に陥る。
1997年の消費税税率アップ(3%から5%)により、消費税による税収は4兆円ほど上乗せされ、その後は10兆円前後の横ばいを維持する。一方、一般会計税収そのものは導入直後の1997年度はやや上向きになるが、すぐに失速。「税率アップ以降、一般会計税収がアップ時より上回る年度は皆無」の状態が続く。
2014年度は現在進行期であり各種税収は予算額の段階だが、消費税率の3%上乗せ分により、消費税税収は5兆円近くの増加、これに伴い一般会計税収も50兆円の大台を回復する(予定)。現時点では予算の段階で、しかも増税導入後の初年度のため「税率アップ以降、一般会計税収がアップ時より上回る」か否かはまだ判断できない。
景気動向を勘案するため日経平均株価を組み合わせる
消費税新設直後における「景気が良かった」を明確にするため、一般会計税収推移のみ・消費税税収のみそれぞれと、各年度の年度終日における日経平均株価(2014年度は数字取得日前営業日の終値)の推移を重ねたのが次のグラフ。景気を表すバロメーターは各種存在するが、日経平均株価が一番身近で分かりやすく、さらには税収とも深い関係があるため、今回グラフに採用した。
↑ 一般会計税収推移(兆円、右)と各年度終日日経平均株価推移(円、右)(-2014年度)
↑ 消費税税収推移(兆円、右)と各年度終日日経平均株価推移(円、右)(-2014年度)
株価は景気動向に先行する傾向があり、売り上げと利益、そしてそれらから生じる税収もまたズレが生じるため、きっかりと同じわけではないが、株価変動と一般会計税収は近しい動きをしているのが分かる。因果関係まではこのデータから「だけ」では実証できないが、少なくとも相関関係は説明できる。「企業業績が上がる」のと「株価が上がる」「企業の利益が増えて法人税が増収する」という関係は容易に理解ができよう。
また、企業の業績向上による収益増で、関係周辺にもその利益が分配されれば、さまざまな経済活動が活性化し、他の税収増も期待できる。親会社の業績アップで子会社への金払いも良くなり、子会社の収益も向上し、法人税もかさ上げされる。そして子会社に勤務している従業員の所得も増え、その一部は消費増につながるといった具合である(無論、その流れにたどりつくまでには、それなりの月日が必要になる。景気伝播の遅行性というものである)。
一方消費税税収はといえば、税率の変更による大幅増収をのぞけば、やはり多少は株価と連動するものの、その額面上の変動幅は小さなもので、安定した税収を維持しているのが確認できる。手堅い税収といえる。
今回作成したグラフから、「日本における過去の経験則として」把握できるのは、「消費税をアップしても中長期的には税収全体は増加しない」という事実。税率を上げれば、直前までの駆け込み需要は期待できるものの、それ以降は経済活動が縮小萎縮し、市場での金周りが悪くなる(特に高額商品に対する需要ブレーキがかかる)。結果的に「利益に対して」発生する税収が減るのは当然の話である。経済促進を推し量るために「経済特区」と称し、さまざな優遇税制措置を取る、逆のパターンを考えれば理解は容易くなる。
特に財務省の立場で考えれば、「景気動向に関係なく入る安定収入が、消費税率をかさ上げすればするほど増えるのだから、これほど素晴らしい話は無い」ことになる。景気動向で左右される不安定な他の税収よりも、安定的な消費税の方が目論見もしやすい。景気動向よりも財務面を重視する財務省筋の観点で考えれば、統合的な、しかし不安定な税収全体の上下より、消費税にウェイトを置く、つまり景気の良し悪しより消費税率のかさ上げに重点を置くのは道理が通る。
もっとも日常社会の実情経験や、上記3つのグラフの動きを見れば分かるように、消費税の導入・増税は大抵において(少なくとも過去の2事例では)経済を委縮させ、他の部門の税収を減退させてしまう。「税収が減った、ならば増税だ」では、自らの首だけでなく、自分の未来と自分らの子供たちの首まで絞めてしまいかねない。
確かに消費税率を上げる方がシンプルではある。そしてそろばん勘定をする財務方にとっては都合が良い。しかし財務の安定や確固たる税収の確保もまた、結局のところ国家そのものの経済を良い方向に歩ませる手法の一つでしかない。その手法一つを実践するために、国そのものの経済に水を差し、意気消沈させてしまったのでは、身もふたもない。それこそ「健康のためなら死んでも良い」という類のものと揶揄されてしまう。
むしろ経済の活性化を促し、社会全体の利益を拡充させ、そこからの収益増を期待した方が、全体的には、そして中長期的にもプラスの面が多い。無論経済は生き物のため、税収に大きな上下幅が生じることになる。しかしそれをやりくりするのが財務方の仕事ではないだろうか。
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