こんにちは、ヴォラーレ株式会社でSEOのコンサルティングをやっている渡邉と申します。皆さんはSEOをやっていくにあたって、自社サイトの順位や成果状況ばかりに目を向けていないでしょうか。SEOで成果を出すためには自社サイトだけではなく、競合のどういったところが優れていてGoogleに評価されているのかを分析してみることも大切です。
ただ、皆さんは競合をみる際に、検索キーワードで1位の競合サイトを見て、「被リンク数が◯万本もあるから評価されて~」「キーワードの出現比率が◯%以上あるから~」なんてことを口にしたり、耳にしたりしていませんか?これはよくありがちな失敗だと思います。全くもって関係ないです、とまでは言いませんが、そういった見た目の数字や小手先のテクニックばかり見ていてはSEOで成果を出していくのは難しいです。
そこで今回は
1:SEOをやっていくうえでどこを競合とみなすべきなのか
2:競合のどういったところを調査すればいいのか、その際に使えるツールはどんなものか
の2部構成で「
競合調査方法 」について紹介したいと思います。
【1】SEOにおける本当の競合はどこか?
(1) 目標は本当にそれであってますか?
一番わかりやすいのは、ビッグキーワードで1位にいるサイトを競合と見なして、ここに勝ちたい!というケースです。中長期的な目標としてビッグキーワードでの上位を目指すのであれば、そこに目標を置く価値がある可能性もありますが、そこしか見えていないという状況でSEOをやっていくのはあまりオススメできません。
理由としては大きく以下の2つが考えられます。
そもそも絶対評価されないキーワードの場合
競合と比較して勝てる要素がない場合
1つ目の場合で言うと、例えば福岡の税理事務所が「税理士」で1位にしたいと思ってもそれは恐らく難しいです。何故なら、検索結果をみればわかるように「税理士」というキーワードで上位にくるのは、協会サイトや資格情報などの税理士を目指す人がみるサイトだからです。こういった状況でいくら「税理士」で上位表示を目指したところでそれは叶わぬ夢ですよね。「税理士 相談」や「税理士 福岡」などの掛けあわせで検索すると税理士に依頼する人がみるサイトが上位にあるので自社サイトも評価される可能性がある、というように狙っていくキーワードでそもそも検索エンジンに評価され得るのかは今一度考えておく必要があります。
▼「税理士」の検索結果
▼「税理士 福岡」の検索結果
2つ目の場合は、“検索エンジンが評価する要素がない”とも言い換えられますが、例えば、都内の数千物件を扱う賃貸物件サイトが数ヶ月や1年そこらで、HOME’SやSUUMOなどの全国型ポータルサイトに勝つのは難しいというケースです。HOME’Sは400万以上、SUUMOは200万ほどの物件を掲載しており、ユーザーが求める情報(=物件情報)が多く、こだわり条件特集やノウハウ系の物件以外のコンテンツもかなり豊富です。こういった状況で検索エンジンが都内特化のサイトをポータルサイトよりも評価する可能性は低いです。(※条件掛けあわせ、エリア掛けあわせなどのキーワードの狙い方によっては部分的に勝てる可能性はあります。) これはHOME’Sなどの巨大ポータルサイトを相手にする場合に限ったことではないですが、競合にはない独自価値を持たないと検索エンジンには評価されません。
(2) ベンチマークすべきは1位のサイトではない!?
ユーザーのニーズは様々で、例えば求人を探す際にも勤務地域や条件、年収…など色々な掛けあわせキーワードで探す人がいると思います。こういった様々な検索ニーズにちゃんと対応しているのかというのは個々のキーワードの順位推移だけでは評価しづらい部分があります。そこで、個々のキーワードの順位では把握しづらい「検索結果上での総合的な見つかりやすさ」をスコア化して、サイト全体の検索結果における露出状況を評価指標としたものが “ファインダビリティ” という考え方です。
例えば、下図は「薬剤師求人×都道府県」での順位ですが、全体で見てみると1位よりも2位にいるサイトの方が実は様々なキーワードに最適化できている(=ファインダビリティが高い)と言えます。こうして、様々な検索キーワードでどれだけユーザーに見つかりやすいのかを見てみると、本当にSEOが強いのはビッグキーワードで1位のサイトとか限らないということが見えてくることがあります。
(3) 競合は検索結果全体で考える
特定キーワード順位やビジネス上の競合企業サイトだけに目を向けるのではなく、「どことユーザーを取り合っているのか」という考え方を持つことも大切です。例えば、中途求人業界においては、検索結果での順位、そこからやってくるユーザーを奪い合うという意味では転職会議やVorkersなどの転職口コミ情報サイトも競合とみなせます。他にも、とある企業の公式サイトでは参照元の3位がNAVERまとめとなっていて、1つのまとめ記事で紹介されたことがきっかけで一定の流入を得ているようです。同様に、Yahoo!知恵袋やなども競合になり得るかもしれません。狙いたいキーワードでこうしたサイトが上位表示されているのであれば、これらのサイトがどういった情報(=コンテンツ)を持っているのか参考にしてもよいでしょう。検索キーワードの広げ方については、
前回キーワード選定について書かせて頂いた記事 があるので、そちらをご参照頂ければと思います。
(4) 関連サイトや検索以外にも目を向けてみる
本サイトでは特に大したコンテンツをもっていなかったり、SEOがそれほど強くはないように見えても、実は関連サイトでかなりの集客をしていたり、Facebookでユーザーとのコミュニケーションをとってファン獲得に成功している企業もあります。
例えば、ニキビケア用品Proactiveでお馴染みのガシー・レンカー・ジャパン社の情報サイト「ニキペディア」ではニキビに関する情報発信を行っており、流入の大半が検索経由となっています。流入キーワードもニキビに関するものが多く、「ニキビケア」というキーワードで1位を獲っています。
▼ニキペディア
http://nikipedia.jp/
特に最近では、オウンドメディアやFacebookページの運用によって、今までの違ったアプローチでユーザー獲得を行っている企業も増えているので、ここもしっかりとチェックしておきましょう。
また、検索以外に目を向ける、という点ではWebから離れて考えてみるのも重要です。最近ではアプリ集客に成功している企業もたくさんありますし、Webサイトは一見ぱっとしないように見えても、特にダイレクトマーケティングや口コミで顧客を増やして年間数億円の売上をたてているブランド買取の企業もあります。
このように、視点を変えてみると、以外なところが真にベンチマークすべき競合となりうるかもしれません。(もちろん広げすぎてもきりがないのである程度優先順位付けは必要です。) 考えるべきは、市場、検索、ユーザーのパイを取り合っているのはどこなのかということを常に考えてみることだと思います。
【2】競合調査ポイントと調査に使える便利ツール6選
競合を洗いだしたら、次は競合を見るときのポイントとその際に使えるツールについてご紹介したいと思います。(様々な角度から競合を洗い出しましたが、一旦Webサイトを対象として、SEOの観点からみていきます。)
今回は以下の4点にポイントを絞って紹介します。
サイト全体状況把握
キーワード
コンテンツ
リンク
(1)サイト全体状況把握
ご存知の方も多いかと思いますが、サイトの全体状況をざっくりと調べるのに便利なSimilarWebというツールがあります。調べたいサイトのURLを入力するだけでリファラや参照元、検索キーワードデータなどの概要をみることができます。このツールで検索流入の割合が高いということはSEO強いのかも?…といった具合で、優先してベンチマークすべきサイトのアテをつけやすいです。さすがに全部が正確な数字というわけではないですが、大方のサイト状況を把握するうえでは十分だと思います。
こちら のサイトに使い方が詳しく解説されています。
▼SimilarWeb
http://www.similarweb.com/
(2)キーワード
競合サイトがどういったキーワードで対策しようとしているのかを見る際には、
のtitle、h1、metaなどの主要なタグに記載されているキーワードをみるのが一番メジャーな方法です。
その他にも、競合のキーワード状況を把握するために使えるのはGRCという順位計測ツールです。自社・競合サイトの順位推移や、ランクインページ(Googleが評価しているページ)を分析することができるので、どのサイトがどういったキーワードで強いのかを把握するのに使えます。(無料版だと3URL、20キーワードという制限があるので、複数・大規模サイトを定期的に調べたい場合はビジネスライセンスを取得した方がいいです。)
▼GRC
http://seopro.jp/grc/
また、タグを見る際に便利なのはSitemapMakerです。Sitemapを設定してサイトデータを取得すると、titleやmeta、h1などの主要タグなどの情報を取得してくれ、取得した情報はcsvファイルとしてダウンロードすることもできるので、競合サイトがどのページで、どういったキーワードを対策しているのかを分析する際に役立ちます。詳しい使い方については
こちら (リンク先:http://sitemap.web-440.com/manual/setup/add_site.html)をご覧下さい。ただ、このツールも無料版だと利用できる機能に制限があるので、同じようなサイトマップ作成ツールの
Website Explorer というツールを使ってみてもよいでしょう。
▼SitemapMaker
http://sitemap.web-440.com/item/
(3)コンテンツ
競合サイトのコンテンツを見る際のポイントとしては大きく以下の4つがあります。
サイトのコンテンツボリュームがどのくらいあるのか (求人数、物件数、アイテム数など)
コンテンツのカテゴライズはどうなっているか (一覧ページ、タグページなど)
1ページあたりの情報量がどれだけ豊富か
コンテンツはどれだけユニークか
ユーザーが望む情報をどれだけ豊富に持っているのか、ということが検索エンジンに評価されるポイントとなります。ただ、情報が多ければ多いだけ、ユーザーが知りたい情報に辿り着きやすくするためにカテゴリ分けをするなどの情報整理を行う必要があります。そのサイトのコンテンツボリュームにあったカテゴライズやサイト構造にする必要があるので、SEOが強いからといって、そもそもコンテンツボリュームに圧倒的な差がある食べログやHOMES’、amazonなどのサイト構造を真似したからといっても上手くはいきません。
1ページあたりの情報量がどのくらいあるのかを把握するのに便利なのがSEO Browserというツールです。URLを入れるだけで画像やCSSを排除したテキスト情報としてページコンテンツを見ることができるので、テキスト量やその中での対策キーワードの入れ方や、リンクのアンカーテキストなどを把握しやすいです。ページが検索エンジンのロボットにどのように見えているのかもわかります。
▼SEO Browser
http://www.seo-browser.com/
また、コンテンツがどれだけユニークなものかということもチェックしておく必要があります。コンテンツは多い方がいいからといって、色んなサイトにある情報をかき集めてかさ増ししただけのサイトを検索エンジンが評価したいと思うはずがありません。「”東京都は日本の首都であり~”」のように文字列を「””」で括った状態で検索するとその文章が使われているサイトが見られるので、特に外部にコンテンツ作成を委託した場合などは他のサイトと重複してないかを確かめることとをおすすめします。あとは、sujikoや影武者などの重複コンテンツチェックチェックツールを使ってみるのも良いでしょう。
▼sujiko.jp
http://sujiko.jp/
▼影武者
http://kagemusya.biz-samurai.com/
他にも、最近は外部リンクによる人為的なSEO手法のリスクが高まり、サイトの内部を改善していこうという流れが高まっており、それに併せてリニューアルを行うサイトが多いですが、Wayback Machineというツールを使えば、過去のサイトを閲覧することができます。URLを入れて、見たい過去の日付を選択するだけでその時点のページ情報を閲覧できるので、サイトのリニューアル前後でサイト構造やカテゴライズ、コンテンツなど、どこが変わったのかを比較する際に便利です。
▼Wayback Machine
http://archive.org/web/
(4)リンク
最近ではよく、「リンクが効かなくなった」というようなことが言われているかと思いますが、正確には「特定キーワードの評価を高めようとするSEO目的の人為的なリンクのリスクが高まった」のだと思います。いまだにリンクの効果はありますし、リンクそのものが悪という訳ではありません。むしろ今後考えるべきは、どうやってユーザーとコミュニケーションをとって、その中で自然なかたちでリンクを獲得していくのか、そして獲得したリンクジュースを重要なページに受け渡していくのかということです。
サイトにどのようなリンクがついているのか確認できるのが、Ahrefs Site Explorerという外部リンクチェックツールです。URLを入れるとそのサイトに付いている外部リンクの増減や、どのようなサイトから、どういったアンカーテキスト(キーワード)でリンクが貼られているのかをチェックすることができるので、
リンク元サイトをチェックして自然リンク獲得のための参考にするのが良いでしょう。使い方については、
こちら をご参照下さい。
▼Ahrefs Site Explorer & Backlink Checker
https://ja.ahrefs.com/
最後に
以上のような項目・流れで競合サイトを調査して、自社サイトの構築の際や改善の取り組みの参考とできそうなところを見つけて行きましょう。ただ、これやれば完璧…などということは到底なく、それよりも、自分たちがどういったユーザーにアプローチしたくて、その人たちに響くコンテンツ作り、サイト作りに取り組んでいくことの方がよっぽど重要です。競合調査も含め、SEOにはこれだ!という正解や近道はありませんが、サイト改善の取り組みを行う際の参考にできるところがあれば幸いです。
お知らせ
■本記事監修の土居が12月10日にセミナーを開催致します。
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■著者紹介
執筆:ヴォラーレ株式会社 Webコンサルティング事業部 グループマネージャー 渡邉 慎平
■監修
監修:執行役員CMO 土居 健太郎
ヴォラーレ株式会社
2007年設立。旧来型の「リンクを使ったSEO」ではなく、技術/マーケティングの両側面からWebサイトを改善していくためのSEOを中心としたWebコンサルティング事業を行っています。WebディレクションやWebマーケティングに携わる方々に、SEOの基本的な考え方・取り組み方をブログ執筆やセミナー、メディア寄稿を通して伝える活動も行っております。
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