ゆるキャラGP優勝:制作者の県職員 ぐんまちゃんはわが子
2014年11月03日
ゆるキャラグランプリ(GP)2014で初優勝を果たした「ぐんまちゃん」は、群馬県職員の中嶋史子さん(47)=前橋市=によって今から20年前にデザインされた。「この子と一生、一緒に生きていく。そんな思いで描きました」。中嶋さんの願いは一つ。我が子のようにかわいがるぐんまちゃんが、これからも長く県内外で親しまれる存在であり続けることだ。
中嶋さんは学生時代にデザイン事務所で働き就職後も仕事の一環でポスター製作を手がけていた。1994年に群馬で開かれた全国知的障害者スポーツ大会の公式マスコットのデザイン公募にも個人で申し込んだ。
目指したのは「幅広い世代、背景の人に親しまれるキャラ」。当時は漫画・絵本作家の故馬場のぼるが描いた初代ぐんまちゃんが、県マスコットとして存在、中嶋さんもお気に入りだった。「そのちびっ子版を書こう」。大会には知的障害のある子どもが全国から参加する。一生懸命になる尊さ、皆で仲良くする楽しさ、そんな大会の本質を込めたかった。ポニーをモチーフに、トレードマークの帽子は、「友情」を意味する緑に塗った。
採用されたポニーは「ゆうまちゃん」と名付けられ、人気から大会後も県のマスコットとして活躍。観光パンフレット、工事現場の看板……。ご当地キャラブーム到来前から、ひっそりと県民の間で親しまれて来た。
ゆうまちゃんは08年に東京・銀座の県アンテナショップの「看板キャラ」として2代目ぐんまちゃんを襲名し、12年には県宣伝部長に就任。ゆるキャラGPでも上位進出し、低迷する群馬ブランドの救世主になった。
中嶋さんは昨今のご当地キャラブームには「全く興味がない」という。それでも一瞬の経済、宣伝効果だけに着目され、刹那的な生き方をするキャラが後を絶たないことは気にかかる。「誰もが自分の土地が好きなように、どのキャラも地元で大事にされてほしい」
毎晩遅くまで試行錯誤を重ねてデザインされたぐんまちゃん。「妖怪みたいにひっそりと、なんとなくそばにいる存在でいてね」。そんな「親心」を胸に、ぐんまちゃんはこれからも、ゆるりと上州を駆けまわる。【尾崎修二】