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目標としてきた今年末までの合意は厳しくなった。「最終ラインが見えるとこ…
目標としてきた今年末までの合意は厳しくなった。「最終ラインが見えるところまで来た」などと強調することが、かえって難航ぶりを浮き彫りにする。
環太平洋経済連携協定(TPP)を巡る交渉である。10月末に参加12カ国による閣僚会合が豪州で開かれたが、目立った進展は見られなかった。
交渉の全体像は変わらない。「新たなルール作り」と「関税撤廃・引き下げを柱とする市場開放」の二つがからみあう。
ルール作りの論点は、新薬の特許などの知的財産権、民間企業と国有企業の公正な競争、貿易・投資促進と環境保護の両立などだ。総じて「先進国対新興国」の構図である。
関税交渉でカギを握るのは参加国全体の経済規模の8割を占める日米両国の交渉の行方だ。日本側の牛肉や豚肉、米国側の自動車・自動車部品などを巡り、にらみ合いが続く。
日米の膠着(こうちゃく)状態のかたわらで、他の国は様子見を決め込む。関税交渉の遅れがルールを巡る交渉の足を引っ張る。そんな「負の連鎖」にどうやってくさびを打ち込むか。
焦点は、米国政府の強硬姿勢が、4日の米議会中間選挙を経て変わるかどうかだろう。
米国が主張する通り、TPPは貿易や投資にかかわる幅広い分野で高い水準の自由化を掲げてきた。
その旗の下で、自国の有力産業との一体ぶりが際だつのも米国だ。畜産や自動車、製薬などの業界と連携し、米国発の多国籍企業の利益につなげる思惑がちらつく。米国が今秋以降、日米交渉の場などでことさら強い態度に出てきたのも、中間選挙を控え、業界の声に敏感になっている議会に配慮してのこと、との見立てがもっぱらだ。
米国のそうした姿勢は「消費者の利益を高める」という通商自由化の理念を曇らせかねない。新薬の特許強化を求める米国に対し、新興国が「安価な後発薬が手に入りにくくなり、国民が困る」と反発しているのが代表例だ。
交渉参加12カ国の担当閣僚は、今月上旬にも再び会合を持つ予定だ。
中間選挙後の米国政府の姿勢は、選挙結果にも左右され、予断を許さない。ただ、交渉の潮目を変える絶好の機会を迎えていることは確かだろう。
国と国との利害のぶつかり合いをまとめるには、妥協も欠かせない――。自由化に前向きな提案をしつつ、米国をそう説得する役回りを果たせるのは、日本をおいてほかにない。
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