運転開始から40年を過ぎた原発をさらに動かすのか。申請期限が迫るなか、円滑な廃炉が進むような仕組みづくりを急がなければならない。

 福島での原発事故後の法改正で、原発の運転期間は40年に制限された。1回だけ最長20年の延長ができるが、そのためには原子力規制委員会に申請し、通常より厳しい検査に合格しなければならない。準備を考えると、電力各社は年内にも結論を出す必要がある。

 商業原発の廃炉は、日本原子力発電の東海原発、中部電力の浜岡原発1、2号機で始まっているものの、今後をにらむと課題が山積している。その一つが、立地自治体の財政だ。

 原発のある県や市町村には、電気料金に含めて徴収される税金を財源とした交付金が配られている。モデルケースだと原発1基を構想してから運転終了までの50年間で1千億円以上のお金が市町村にもたらされる。

 使い道も、近年は保育園や図書館、公民館などの人件費や乳幼児への医療費補助など、一般財源とほぼ同じ。ほかに固定資産税や電力会社からの寄付もあり、歳入を原発に依存する市町村は多い。

 廃炉となれば翌年度から交付金はなくなる。そのために住民生活が脅かされることは避けるべきだ。経済産業省も対策の検討を始めたが、原発依存を減らすうえでも、立地自治体に対する何らかの経過措置や支援を考える必要はある。

 それにも当然、節度が求められる。交付金制度については、新規建設に向けた積立金が多すぎると会計検査院に再三指摘されてきた経緯がある。

 検討に際しては、原発推進を目的とした国の支出全般を根底から見直し、廃炉や立地自治体の再生にあてるものへと組み替えてはどうか。「もんじゅ」を含む核燃料サイクル事業も当然、その対象となる。

 自治体自身の取り組みも大切だ。立地市町村はもともと経済力に乏しく、だから原発を受け入れてきた経緯がある。原発のない過疎地で町おこしに成功した事例なども参考にしながら、電力消費地も巻き込んだ「原発後」を考えてほしい。

 2年程度で完了する火力発電所の廃炉とは異なり、原発の解体には放射線の問題などがあって、20~30年の歳月がかかる。今後は規制や収益性の面で、予定より早く廃炉となる原発も出るだろう。廃棄物の処分地も決めなければならない。

 廃炉できる環境の整備。それが政府の役割だ。