57人が犠牲になった御嶽山(長野・岐阜県境、3067メートル)の噴火の際、火口から流れ出た熱水が火山灰などと交ざって流れ下る「火口噴出型泥流」が起きていたことが2日、明らかになった。福岡市で開催中の日本火山学会秋季大会で、複数の専門家が報告した。過去に焼岳(長野・岐阜県境)などでも起きている。大規模だと麓に被害が出る可能性があり、「発生状況をきちんと把握する必要がある」との指摘も出た。
航空測量会社「アジア航測」(東京)はこの日、噴火翌日の9月28日に上空から撮った写真を提示。頂上の剣ケ峰南西側にある地獄谷で、濁川上流の底に濃い灰色の筋が約4・5キロにわたって確認できるとした。噴火から撮影までの間に雨は降っておらず、熱水と斜面の湧き水が混ざって泥流が起きたと報告した。
今回は小規模だったが、同社総合研究所理事の千葉達朗技師長は「噴火が山麓に直接影響しない規模でも、泥流で被害が起きる恐れがある」と指摘。発生予測は難しく、発生を迅速に把握して住民に伝える態勢が課題だとした。
産業技術総合研究所火山活動研究グループの及川輝樹主任研究員や東大地震研究所も、火口噴出型泥流の発生を報告。及川主任研究員は、泥流の跡は白っぽい火山灰の上にあると説明。午前11時52分の噴火直後に低温の火砕流が地獄谷を約2・5キロ流れ下り、午後1時ごろ以降に熱水が火口から流れ出たとみる。
東大地震研は噴火直後の写真から、火口の一つで27日午後3〜4時ごろに熱水が流れ出たと分析した。
及川主任研究員によると、1962年の焼岳、2006年の雌阿寒岳(北海道)の噴火でも火口噴出型泥流が発生した。頻度や規模などの情報が少ないため、防災に生かす詳しい調査が必要とした。
アジア航測の千葉技師長は、台風18号の雨などで10月5日に濁川で土石流が起きたのは、泥流で火山灰が下流に広がっていたことが影響したとみている。