(2014年11月1/2日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
中央銀行はお金を創り出すことができる。そのため中銀は、ほんのいくつかの言葉を使って市場を動かす力――ひいては世界の経済圏の間の交易条件を変える力――を持つ。
中銀は予想をコントロールすることで、その力を最大化する。肝心なのは中銀の行動だけではない。中銀は究極的に、為替レートやコモディティー(商品)価格、債券利回りなど、市場が定めた水準を通じて力を行使する。ニュースを聞いた時に、市場は過剰反応して行き過ぎる傾向がある。このことは、中銀が衝撃を望んでいるときには役立つが、落ち着きを望んでいるときには問題を生み出す。
市場の予想を見事に管理したFRBと日銀
10月最終週に、2つの中銀が市場予想の管理の見事な模範を示した。10月29日に米連邦準備理事会(FRB)は不満のささやきさえ全く出ない中、「QE(量的緩和)」として知られる債券購入を終了した。市場は用意ができており、落ち着いていた。
日銀の追加緩和は市場の不意を突いた(10月31日、日銀本店で記者会見する黒田東彦総裁)〔AFPBB News〕
そして31日、日銀は反対のことをし、すでに積極的だった債券購入を拡大して完全に市場の不意を突いた。
債券購入は、債券の利回りを押し下げ、通貨を弱くする方法だ。なぜなら、外国人がそこへお金を預けておくことで得られる利益が減るからだ。通貨安は、日本経済にとって極めて重要な輸出業者を後押しする。
短期的には、FRBも日銀も望んだものをすべて手に入れた。米国の金利は依然として非常に低いが、もはや10月半ばのような経済的なパニックを示してはいない。当時は10年物国債の利回りが一時、1.86%まで低下したが、今では2.3%だ。
また、言うまでもなく、S&P500株価指数は、大きく下げた後に戻して史上最高値を更新した。同指数は5週間で9.8%下げた後に10.8%戻している。
日本について言えば、日銀は円を懲らしめ、その両目の間を撃ち抜くことに成功した。円の対ドル相場は現在、2008年第1週以来の安値をつけている。2011年以降、円は32%下落した。チャートを見れば分かるように、円安は依然として、直接的に日本株上昇につながっている。