広域のニュース
  • 記事を印刷

東北4火山の防災協未整備 各県、被害想定なく困惑

 御嶽山(長野、岐阜両県)噴火を受け、政府は常時観測対象の全国47火山のうち火山防災協議会が未整備となっている9都道県の14火山について、2014年度内の設置を関連自治体に求める方針を決めた。東北では10火山中4火山が未設置。国は有事の態勢整備を急ぐが、避難計画作成の前提となる被害想定などが決まっていないことから各県が頭を抱えている。
 岩木山=青森県=は1975年に群発地震があったが現在は静穏。年内の協議会設置に向け国と県は昨年度から、噴火の影響範囲の検討を進める。県防災消防課は「一般的に火山の周辺には観光地が多い。観光業界を巻き込んだ対策を打てるかが課題だ」と話す。
 蔵王山(蔵王連峰)=宮城、山形両県=は10月上旬に山頂付近の「お釜」で水面の白濁が確認され、仙台管区気象台が初の解説情報を出した。宮城県は刈田岳、熊野岳の避難小屋にヘルメットや飲料水を配備。東北地方整備局が本年度内の被害想定策定を目指すなど取り組みが加速する。
 両県は10月31日、協議会設置の前段として関係機関の担当者で構成する「連絡会議」を設置。本年度は入山規制の在り方を決める。
 栗駒山=岩手、宮城、秋田各県=は噴火の兆候がなく、東北の10常時観測火山で唯一ハザードマップがない。宮城県危機対策課は「避難計画を作るには協議会で一から準備しないといけない。現状では静穏な栗駒山より、蔵王山の対策が優先される」と述べる。
 岩手県では岩手山の協議会「岩手山の火山活動に関する検討会」が設置済み。この中に栗駒山が検討事項として盛り込まれている。県総合防災室は「栗駒山が活発化すれば最も影響を受けるとみられる岩手県が宮城、秋田両県に働き掛ける必要がある」と語る。
 鳥海山=秋田、山形両県=をめぐっては吉村美栄子山形県知事が10月に「蔵王山のように明らかな現象はないが、その対応に準じ、しっかり対応する」と述べ、秋田県と協議会を設置する意向を表明した。
 ただ、東北地方整備局は噴火シナリオ、被害想定を策定している最中。政府の「号令」を受け、両県はまず連絡会議を設置する「蔵王山方式」も検討している。

 内閣府の担当者は、被害想定がない状況で避難計画を作成する困難に理解を示しつつ「噴火シナリオやハザードマップを早期に作るためにも、知見を有する気象台や地方整備局がメンバーの火山防災協議会の枠組みづくりを急ぐことが重要だ」と話した。

[火山防災協議会] 47常時観測火山について都道府県、市町村、地方整備局、気象台、火山専門家などの関係機関が協力し、ハザードマップや避難計画などを策定する組織。独自に噴火シナリオを作成するケースもある。2011年、国の火山防災の基本方針を定めた防災基本計画(火山災害対策編)の修正に基づき、都道府県などに設置が求められた。


2014年11月04日火曜日

関連ページ: 広域 政治・行政

記事データベース
先頭に戻る