再稼働の課題 避難計画11月3日 19時37分
川内原子力発電所の再稼働に向けた課題の1つが、原発から30キロ圏内にある自治体が定める避難計画です。
鹿児島県と原発が立地する薩摩川内市、それに周辺の8つの市と町は、福島第一原発の事故のあと国が新たに定めた指針に基づいて避難計画を策定してきました。
政府は県や薩摩川内市に職員を派遣し、計画の策定を支援しているほか、原子力防災会議で周辺自治体の避難計画を点検し、「避難計画を含め緊急時対応が、具体的、合理的であることを了承する」としました。
しかし、計画で定められた避難ルートでは地震や津波のおそれがある場合に避難できないといった指摘があるほか、計画の策定が求められている病院や福祉施設のうち10キロから30キロ圏の施設では具体的な避難先や避難ルートが決められていないなど、多くの課題が指摘されています。
災害時の住民の心理に詳しい東京女子大学の広瀬弘忠名誉教授は「実際に事故が起きれば、想定外のことがたくさんあるが、川内原発周辺の避難計画は都合のよいシナリオで作られていて、『原発事故は起こらない』という信念の下に作られているとしか見えない。通れない道をどうするか、交通規制をどうするかなど、さまざまな具体的な施策が抜けている。また、援助がなければ避難できない人の対策は、1つの施設、1つの自治体の手にはとても負えないもので、国が積極的に関与して、受け入れ病院を決めて搬送し、介護するなどのシステムを作らなければいけない。事故が起きたときに、力を持った国がどう援護して安全に避難させるかという、もっと具体的で役に立つ計画ができていないと、住民には再稼働が不安材料になって落ち着いて生活できないのではないか」と話しています。