ベネッセ流出:「野放し状態」名簿ビジネス、規制強化へ
毎日新聞 2014年10月14日 15時00分(最終更新 10月14日 15時26分)
通信教育大手ベネッセホールディングス(岡山市)の顧客情報を不正にコピーしたなどとして、不正競争防止法違反(営業秘密の複製、開示)の罪に問われた元システムエンジニア(SE)の松崎正臣被告(39)の初公判が14日、東京地裁立川支部(倉沢千巌<ちいわ>裁判長)で開かれた。このベネッセの顧客情報漏えい事件は、個人情報を公然と売買する名簿業者の実態と、法規制を巡る問題点を浮き彫りにした。
捜査関係者によると、ベネッセから流出した情報は重複分を含め2億件超に上り、東京都内の名簿業者3社に売却された。不正に入手した情報と認識していれば立件が可能だが、いずれも警視庁の調べに対し「不正に持ち出された情報だとは知らなかった」などと話しているという。
流出情報はこの3社から、少なくとも13業者に転売され、最終的な流出先は全国数百社に達したとみられる。購入していたのは学習塾や英会話学校、化粧品会社など多岐にわたるが、転売に関与した名簿業者の責任を問うことは一層難しい。個人情報保護法が、業者が第三者に情報を提供することについて、例外規定で事実上容認しているからだ。
現行法は、個人情報を扱う業者に対し、本人の同意なしに第三者に情報を提供することを原則禁じている。しかし、ウェブサイトなどに「本人からの求めがあれば、提供の停止や削除・訂正ができます」とうたっておけば第三者への提供が例外的に可能になる。また、流出した情報と知らずに取得した場合、削除に応じなければならないとする規定がない。その結果、情報が名簿業者などの間で転売され拡散してしまうことが多い。
名簿ビジネスはいわば「野放し状態」で、政府は業者が個人情報を販売する際、独立した第三者機関への届け出を求めるなど規制強化に向けた法改正の検討を進めている。さらに情報漏えいが発覚した場合、流出した情報かどうかの認識の有無にかかわらず、全事業者に削除義務を課すなど、被害拡大を防ぐ対策も盛り込みたい考えだ。【林奈緒美】