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人口減 成立せぬ商圏/立ちすくむ中心街(3)/かすむ復興

シャッター通り化が進む福島県広野町の駅前商店街。23キロ北の福島第1原発事故が暗い影を落とす

<「未来が急に」>
 東日本大震災被災地で加速する人口減が、商業者を痛打する。その影響は津波被害を受けた沿岸部にとどまらない。
 「10〜20年後の未来が急に来たようだ」。福島県広野町のJR広野駅前。酒店を営む小貫隆幸さん(42)は、町勢の停滞に頭を悩ませる。
 福島第1原発から南に23キロ。建物の被害は軽微だったが、震災をきっかけに客足が途絶えた。かつてにぎわったメーン通りは、シャッター街と化している。
 原発事故時、町は独自に避難指示を発令。2012年3月の解除に伴って1679人(ことし9月末現在)が戻ったものの、定住人口は震災前の3割強にとどまる。多くは車で30分程度のいわき市などで暮らしている。
 小貫さんは「いわきは買い物も通院も便利。広野に戻るメリットは薄い」と力なく語る。

<太刀打ち困難>
 現状打開に向けて地元商工会はことし5月、商品を宅配する新サービスを導入した。だが、これまでの利用実績はわずか60件。帰還状況を考えれば、大きな需要の伸びは期待できない。
 「このままでは商売は続けられない」。地域で金物店を営む女性(70)は、3代目となる自分の代での廃業を決めた。
 なじみの鮮魚店が閉店したため、いわきまで買い物に出掛けている。日用品、食料品がそろわない商店街では、大型店に太刀打ちできないことを実感している。
 廃炉作業のトラブルが続き、生活は常に不安と背中合わせ。「肉体的にも精神的にも負担が大きい」。女性が疲れた表情を見せた。

<町の計画 疑問>
 人口は商圏の基盤そのものだ。多数の犠牲者を出した津波被災地の事情はさらに厳しい。
 宮城県山元町は、内陸移転先に計2.7ヘクタールの商業ゾーンを設ける計画を進めている。購買力向上と人口集積の好循環を狙うが、事業の行方には不透明感が漂う。
 震災前に比べて町民が2割減った上、購買層となる被災者の移住が進まない。約700戸整備する移転先のうち、10月段階で住宅団地に42%、災害公営住宅に15%の空きが生じている。
 商店経営者の一人は「商圏には配達先も含めて2000戸が必要。現状では商売が成り立たない」と、町の計画に疑問を投げ掛ける。
 新市街地の完成は15年度末に迫っている。亘理山元商工会の森輝雄副会長は「隣接する既存商店街の活用も必要になるのではないか」と地域の未来を案じた。


2014年11月02日日曜日

関連ページ: 福島 社会 かすむ復興

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