新米価格:昨年より1〜2割安 豊作にコメ離れで

毎日新聞 2014年11月03日 20時29分(最終更新 11月04日 00時27分)

西友で扱う新米のあきたこまちの価格は、前年より2割弱安い=東京都北区の西友赤羽店で10月29日、神崎修一撮影
西友で扱う新米のあきたこまちの価格は、前年より2割弱安い=東京都北区の西友赤羽店で10月29日、神崎修一撮影

 2014年産のコメの店頭価格が値下がりしている。スーパーなどでは各産地の新米が出そろっているが、昨年秋よりも1〜2割安くなっている。ここ数年、各地で豊作が続いている一方で、コメの消費は減少、コメ余りとなっているのが主な要因で、精米5キロが1500円を下回るケースもある。消費者にとって安くコメを買えるのは朗報だが、収入が減る農家は悲鳴を上げている。

 「新米入荷秋田県産あきたこまち」。西友赤羽店(東京都北区)は1階のレジ近くに特設コーナーを設けてコメを山積みし、目立つ価格表示で買い物客にアピールしている。5キロで1490円(税抜き)と、昨年秋(1790円)に比べ2割弱安い水準だ。

 新潟県産コシヒカリや北海道産ななつぼしも15%程度安い価格で店頭に並んでいる。北区の主婦(43)は「消費税増税後は少しでも安く買い物しようと、いくつものスーパーを巡っている。子供が4人いて毎日の弁当もあるので、コメが安いのは大助かり」と笑顔を見せる。

 1990年代までは政府が大半のコメの価格を事実上決めていたが、今は需要と供給のバランスで決まる。公益社団法人の米穀安定供給確保支援機構によると、9月の精米の平均小売価格は1キロ357円で前年同月より約9%安くなった。農水省が発表した14年産の新米の9月の取引価格は前年同月比16・1%安い60キロ1万2481円と、06年の調査開始後で最安値となっている。コメの在庫は積み上がっており、JAグループや卸売業者などが抱える民間在庫は6月末で前年とほぼ同じ222万トンと過去最高水準。今年は新米が店頭に並ぶ前から過剰感が出ていた。

 こうした現状を受け、農家の間では米価下落への危機感が広がっている。コメの販売委託を受けた農協が農家に支払う仮払金は、主要銘柄の新潟県産コシヒカリで1俵(60キロ)あたり1万2000円と、前年比で1700円の下落。コメどころ東北の岩手県、宮城県産のひとめぼれも、8400円と2800円の大幅な下落だった。

 岩手県花巻市のコメ農家大和章利さん(66)は「農家は今、本当に青息吐息だ。このままでは肥料や農薬などの代金を払えないので、農協からの一時融資でしのぐしかない」と話した。

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