本当に救われたのは右派女性閣僚
安倍内閣は5人の女性閣僚でスタートした。真っ先に問題になったのが高市早苗総務相だった。ネオナチ思想に共鳴する極右団体の活動家と2ショットの写真が問題になった。「国家社会主義日本労働者党」(NSJAP)と名乗る団体で、国家社会主義思想や反ユダヤ主義を掲げ、ホロコーストの否定や外国人労働者の排斥などを訴えている。
自民党政調会長になった稲田朋美氏、副幹事長の西田昌司氏を含め3人とのツーショットがNSJAPのサイトに掲載された。高市は「雑誌のインタビューに来た出版社の方についてきた人で、頼まれて写真を撮っただけ」と釈明したが、この雑誌は極右論壇誌「撃論」。在日特権を許さない市民の会の主張などを紹介する雑誌である。
次に問題になったのが山谷えり子国家公安委員長・拉致問題担当相だった。在特会の幹部との長年の交際が明らかになった。在特会のヘイトスピーチは目に余るものがある。大阪鶴橋のコリアンタウンでは「南京虐殺でなく鶴橋大虐殺を実行しますよー」と絶叫する女性が喝采を浴びたりしている。
国連の人種差別撤廃委員会は8月「適切な捜査と起訴ができる法制度」を日本に勧告した。政府も在特会を「威力業務妨害、名誉棄損の疑いがある」として、取り締まりの対象にしている。その警察を監督する国家公安委員会の頂点に、安倍首相は山谷氏を就任させた。
外国特派員協会での記者会見では山谷氏に対し「記念撮影した相手は長年の交際があると言っている」「国連・米国国務省・警察庁が問題にしている団体だ」などと在特会との関係に質問が集中した。山谷氏は「在特会の関係者とは知らなかった」「組織についてはコメントできない」などとあいまいな答えに終始した。
山谷氏、高市氏、稲田氏らは安倍首相の同志である。抜擢した右派女性閣僚に国際的なスポットライトが当たりそうになった時、このグループと距離を置く小渕・松島両氏のスキャンダルに火が付いた。救われたのは山谷氏らである。火種はなお残る。
海外が関心を寄せるのは、ウチワや明治座ではなく、政権の思想であり目指す針路なのだ。