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サイバー攻撃、専門家に恩恵 ウォール街でモテモテ、報酬100万ドル超はざら
配信元:ブルームバーグ
更新トレンド・マイクロのサイバーセキュリティー責任者のトム・ケラーマン氏は銀行業界のセキュリティー対策人員の不足を指摘する(ブルームバーグ) ウォール街で働く人の一部にとって、犯罪は報酬増を意味する。サイバー攻撃の激化に悩む大手銀行はこの2年で、高い技術を持つコンピューターセキュリティー専門家の報酬を2倍以上に引き上げ、その額は多くの場合100万ドル(約1億1175万円)を超えたと、ある人材斡旋(あっせん)会社は指摘する。
5年前の報酬が20万~50万ドルだったサイバーセキュリティー担当上級幹部は今なら200万ドル以上を稼げると、ニューヨークの人材斡旋会社ボイデン・グローバル・エグゼクティブ・サーチのジーン・ブランソーバー氏が述べた。
「最高情報セキュリティー責任者」などの職は今では、トレーディングや投資銀行業務を担当するマネジングディレクターと同じ程度の報酬を得ているとも言われている。
JPモルガン・チェースなど大手銀への攻撃で、ハッカーに対する業界の脆弱(ぜいじゃく)さが浮き彫りになった。銀行はセキュリティー分野での経験が豊富で、取締役会や政府、技術者と直接対話できる人材を求めている。
銀行間で20~50%の報酬アップをちらつかせた人材の引き抜きあいが起きていると、幹部人材紹介会社SEBAインターナショナルの創業パートナー、ロバート・イオマッツォ氏が説明した。
コンピューターウイルス対策ソフトウエア会社トレンド・マイクロのサイバーセキュリティー責任者、トム・ケラーマン氏は「われわれのような人材がひどく不足しているので、銀行は同業他社から引き抜くしかない」と話している。
ウォール街では金融危機後、コンプライアンス(法令順守)人員の増強や新規則への適応、和解金の支払いへの圧力が高まるなどコストの増加に銀行は頭を悩ませている。そんな中でのサイバーセキュリティー部門の拡張は、人材不足で責任者の獲得・維持が難しく、銀行にとって新たな問題となっている。
マサチューセッツ・ミューチュアル・ライフ・インシュアランスの情報セキュリティー担当責任者、サミア・サイト氏は「善の立場にいながらハッカーのように考える人を探さなければならない。こうした人を獲得するコストは急騰している」と述べた。
報酬だけでなく、サイバーセキュリティー責任者の社内での地位も上がっている。デロイトのプリンシパル、ビクラム・バト氏は「10年前は最高情報セキュリティー責任者は利益を生む部門の後方支援的立場に置かれていた。今は主要な役割を果たしている」と話した。
セキュリティー責任者が会社の上層部に報告を行わなかった場合、監督当局は幹部にリスクに迅速に対応する権限がないと懸念を示す可能性があるとバト氏は指摘。そのことは、幹部にセキュリティー責任者の助言に耳を傾けるよう圧力がかかっていることを意味する
コンサルタント会社、プロモントリー・フィナンシャル・グループのディレクター、ゲーリー・オーウェン氏は「突如、取締役会と経営幹部にセキュリティー問題の説明責任が問われるようになった」と述べた。(ブルームバーグ Madeline McMahon)