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「ポジティブなだけの人は幸せになれない」 人生の幸福を最大化する、3つの生き方

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「ポジティブなだけの人は幸せになれない」 人生の幸福を最大化する、3つの生き方

心理学は人々を幸せにすることができるのか? この問いの答えを探し続けた心理学者・Martin Seligman(マーティン・セリグマン)氏が、長年の研究の末たどりついた「3つの幸せな生き方」を紹介します。(TEDより)

【前編】幸せな人の共通点は「セミナーとかに参加しないこと」–ポジティブ心理学の生みの親がセミナー会場でぶっちゃける

【スピーカー】
 

【動画もぜひご覧ください!】
Martin Seligman: The new era of positive psychology

3種類の「幸せな生き方」

マーティン・セリグマン氏:私は、ブッダからトニー・ロビンズまでの、何世紀にもわたる「幸せになる方法」を検討することから始めました。120ほどの方法が、人々を幸せにすると言われています。

そのうちの多くはマニュアル化ができましたし、ランダムテストを行って効果や有効性を検証できました。では、どれが本当に人を永続的に幸せにするのか? これからその結果をご紹介します。

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ただこの話の要点は、心理学が持つ、精神疾患の治療という使命と、苦しんでいる人のつらさを和らげるという使命に加えて、私が心理学に持って欲しいと願う使命です。それは、「心理学は本当に人々を幸せにすることができるのか」という問いかけです。

そのことを問うためには、私があまり使わない「幸せ」という言葉を噛み砕いて、議論できる形にしなければなりません。幸せには、3つの異なった種類があると考えています。区別する理由は、これらの3つは異なった方法で得ることができ、どれかひとつだけを勝ち取ることもできるからです。

3種類の異なった「幸せな生き方」があります。

1つ目の幸せな生き方は、「楽しい人生」です。これはできるだけたくさんのポジティブな感情を持ち、それを大きくしていくスキルを身につける生き方です。

2つ目は「夢中になる人生」です。仕事、子育て、恋、趣味などをしている時に、時間を忘れます。これはアリストテレスが言っていたことです。

3つ目は「意味のある人生」です。

ポジティブな感情の50%が遺伝で決まる

これらの3つの生き方のそれぞれについて、わかっていることをお話します。

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1つ目の「楽しい人生」は、単純に快楽を手に入れるように最善を尽くす生き方です。できる限り多くの楽しみと、できる限り多くのポジティブな感情を持つこと。

そして、それらを時間的・物理的に引き延ばせるように、喜びをじっくり味わう、小さな楽しみを見つけるなど、快楽をより大きくする技術を学ぶ生き方です。

しかし快楽の人生には3つの欠点があります。ポジティブ心理学が幸福学ではなく、講演がここで終わらない理由がそこにあります。

楽しい人生の欠点の1つは、何を楽しいと感じるかの経験が、遺伝性であるということです。人が持つポジティブな感情の50%程度が遺伝的で、たいして変えることができません。マシューや私やその他の何人かが知っている、ポジティブな感情を増やす方法をもってしても、15%から20%程度しか変わりません。

2つ目は、ポジティブ感情には慣れが生じることです。実に急速に慣れてしまいます。私はフレンチバニラアイスクリームが好きです。最初の味は100%です。しかし6口目を食べるときにはそうではない。そして申し上げたように、特に鍛えることもできません。

ポジティブでなければ幸福ではないのか?

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ここで2つ目の幸せな生き方が出てきます。なぜポジティブ心理学がポジティブ感情と喜びを積み上げることに留まらないのかを説明するために、レンのことを話しましょう。

30歳の頃には人生の3つのステージのうちの2つで、レンはとても成功していました。最初のステージは仕事です。20歳になる頃にはオプション取引をしていました。25歳の時には億万長者になっていて、オプション取引会社の社長になっていました。

第2のステージは遊びです。彼はブリッジの国内チャンピオンでした。しかし第3のステージである恋愛については、レンは救いようのない落伍者でした。彼は非常に冷たい人間だったのです。

レンは奥手ではありませんでした。アメリカ人女性がレンとデートした時に彼に言いました。「あなたって楽しくないわ。ポジティブな感情がまるっきりないんだもの。さっさとどこかへ行って!」。

レンはとても裕福だったので、パーク・アべニューの精神分析家のところへ行って診察を受けました。精神分析家は5年かけて、レンの中にポジティブ感情を閉じ込めた性的トラウマを見つけようとしました。

しかし、性的トラウマは全くありませんでした。わかったことは、レンはロングアイランドで育ち、フットボールで遊び、フットボールを観戦し、ブリッジをしていたことだけです。レンはポジティブ感情の情動性で並べたら、下位5%に入ります。

レンは不幸なのでしょうか? 私は違うと思います。ポジティブ情動性の下位50%の人間について心理学が説明することとは裏腹に、レンは私が知っている最も幸福な人のうちの1人でしょう。

長所を活かして生きることが良い人生をつくる

彼は不幸にとらわれたりしません。また、みなさんと同じように非常にうまくフロー(集中力の流れ)を活用できます。朝9時30分にレンがアメリカ証券取引所に入ると、彼の時間は止まり、彼は仕事に没頭します。それは終了の合図まで続きます。最初のカードが切られると、10日後にブリッジトーナメントが終わるまでレンの時間は止まります。

これはまさしくミハイがフローについて話していたことです。また、フローと快楽の違いは非常に重要です。快楽にはその場で起こっているという生の感じが伴います。思考と感覚があります。

しかし、フローが起こっている間には何も感じません。音楽と一体になり、時間が止まるというわけです。強烈な集中状態です。これは確かに、良い人生の特徴です。

そして最も高い強みを知るという、良い人生を作るためのレシピがあります。繰り返しとなりますが、あなたの最も高い5つの強みを知るための、有効なテストがあります。その長所をできるだけ活かせるように人生を修正しましょう。仕事も恋愛関係も、趣味も友人関係も子育ても。

一例として私が昔一緒に働いていた人の話をしましょう。彼女はスーパーのレジ係でした。彼女は自分の仕事を嫌っていました。

大学に通う間ずっと働いていました。彼女の1番の強みは社会的知性だったので、その日で1番の社会的体験をお客さんに提供できるように仕事のやり方を変えようとしました。

もちろんうまくいきませんでした。しかし彼女は1番の強みを見つけ、仕事でそれを最大限に活用するようにしました。それによって、笑顔が増えたわけではありません。デビー・レイノルズみたいなスマイルにはなりません。そんなにクスクス笑うようなこともありません。

そうではなく、もっと没頭できるようになります。これが2つ目の方法です。1つ目の方法はポジティブ感情、2つ目の方法は集中力のフロー状態。

自分より大きな何かのために人生を捧げる生き方

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3つ目は意味です。これは伝統的にも、幸せの中で最も尊敬されるものです。前の項目、好きな事に没頭することと並行して、自分より大きな何かに捧げるために、自分の最も高い強みを知ること、そしてそれを使うことから成り立ちます。

楽しい人生、夢中になる人生、意味のある人生の3つの生き方を紹介しましたが、ここで誰もが気になってくるでしょう。永続的にこれらの生き方をするための方法があるのだろうか? その答えはイエスと思われます。

例をお話ししましょう。これらは厳密な方法で、本当に効き目がある薬を検証するのと同じやり方で確かめられてきました。さまざまな方法に対して、ランダムテスト、プラシーボ効果、長期研究を私たちは行いました。効果があると判った方法をいくつか示します。

「楽しい人生」について教えるときに、人生の喜びを増やすための習得課題として、集中する技術や満喫する技術を身につけさせます。

素晴らしい1日を作り上げることを宿題にします。次の土曜日には、いつも気にしていることは脇に置いて、良い1日を過ごしてください。快楽を満喫して精神を充実させて快楽を高めてください。そうすることで、楽しい人生の質は高められていきます。

「感謝の訪問」について話しましょう。皆さんもイメージしてください。目を閉じて、あなたの人生を良い方向に変え、非常に重要なことをしてくれた、にもかかわらずこれまでにちゃんと感謝を伝えられなかった誰かを思い浮かべてください。今も生きている人に限ります。

よろしいでしょうか? では目を開けてください。ぴったりな人が見つかったかと思います。「感謝の訪問」をする時にあなたがすることは、その人に300語の感謝状を書いて、フェニックスから電話をかけて、なぜかは言わずに訪ねてよいか聞きます。訪ねていって感謝状を読んでください。誰もがこの時に涙を流します。

1週間後、1ヶ月後、3ヶ月後にテストしてみるとより幸せであり、またうつ状態にもなりにくくなっています。

「意味の追求」と「夢中の追求」の間には強い関係性がある

他の例として「強みのデート」があります。カップルのそれぞれに、1番の強みをテストで調べて、2人の強みを活かせる一晩を計画してもらいます。これはお互いの関係の強化につながります。

また、「楽しみと慈善活動」という対比もあります。慈善活動に打ち込む人が多く集うこのような場に加われたことは、実に元気づけられることです。

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さて、私の学生も共同研究者もこれを解明できていなかったので、実際に人々に利他的なことや楽しいことをしてもらって、その2つを比較しています。

わかったことは、楽しいことをした時にはその気持ちは矩形波のようにしばらくすると元通りになります。他人を助ける慈善的なことをすると、その効用は長く持続します。これらはポジティブな人助けの例です。

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最後の1つ前に話したいことは、人々がどれほどの満足を一生の中で得られるかについてです。これが本当に大切なことで、これこそが目標とする変数です。

3つの異なった生き方の関数として、人生でどれほどの満足が得られるのかを問いかけました。15通りの条件を、数千人の人々を対象にして検証しました。

快楽とポジティブ感情を追求する楽しい人生。時間が停止し、夢中になるフロー体験を追求する人生。意味を追求する人生。それぞれがどのように人生の満足に影響しているのか?

結果は驚くべきもので、予想とは反対でした。快楽の追求は、人生の満足にほとんど関係がありませんでした。意味の追求が最も強力なものでした。夢中の追求にも強い関係がありました。快楽は、夢中になることと意味を持ってこそ役に立ち、そのとき喜びはホイップクリームやチェリーのように彩りを添えます。

つまり3つが全てそろった生き方は、3つの総和よりも大きく、逆に3つのどの生き方もない空っぽの人生は、それぞれの生き方よりも小さなものになってしまう。

「幸せになる技術」と「不幸を取り除く技術」は別物

そして現在追究している疑問は、身体の健康、病的状態、寿命、生産性は、先ほどの話と同じ関係なのかということです。つまり会社における生産性は、ポジティブ感情と夢中になることと意味に関係があるのか?

健康は夢中になること、快楽、人生の意味に関係があるのか? どちらの答えも「関係あり」と考える理由があります。

クリスによると、最後の講演者は全ての講演を総括する機会がもらえるそうです。それを聞いた時は驚きました。これほど多様な人が集まる講演会に出たことはありませんでしたから。こんなにも自分の可能性を広げる講演者の方々を見たのは初めてで、実に素晴らしいことです。

しかし、心理学の問題はテクノロジーとエンターテインメントとデザインの問題に似ていることに気づきました。テクノロジーとエンターテインメントとデザインは破壊的な目的のために扱われてきていて、これからもそうかも知れません。

それと同時にこれらは、苦難や不幸を取り除くためにも使うことができます。ところで、苦難や不幸を取り除くことと、幸せを築くことの区別は非常に大切です。私が30年前に初めてセラピストになった時には、患者を落ち込ませず、心配をなくし、怒りを和らげれば幸せにできると思っていました。

でもそうなったことはありません。できたことは人をゼロに持ってくることでした。しかし、彼らは空っぽのままでした。

そこでようやく、幸せになる技術、快楽の人生を生きる技術、夢中の人生を生きる技術、意味の人生を生きる技術は、苦難と不幸を取り除く技術とは違っていることに気づきました。

テクノロジー、エンターテインメント、デザインは幸せの総量を増やす

同じことがテクノロジー、エンターテインメント、デザインにも当てはまると考えています。つまり世界の推進力であるこれら3つは、幸せとポジティブ感情を増やすことが可能で、一般的にもそのように使われてきました。

しかし私が話したように幸せを分解してみると、ポジティブ感情だけでは不十分で、人生の中にはフローと意味も欠かせないことがわかるでしょう。

デザインに加えてエンターテインメントとテクノロジーは、人生の中に意味のある夢中を増やすことができます。

まとめます。オプティミストになるべき11番目の理由とは、宇宙エレベータに加えて、テクノロジーとエンターテイメントとデザインによって、私たちはこの星に生きる人類の幸せの総量を、実際に増やすことが可能なことです。

テクノロジーが次の10年、20年に快楽の人生と、夢中な人生と、意味のある人生を増やすことができたら、非常に素晴らしいです。エンターテインメントが、ポジティブ感情と意味とフローを増やすことに転用できたら、非常に素晴らしいです。

デザインがポジティブ感情、フロー、そして意味を増やせたら、そして私たちが1つになれたら非常に素晴らしいです。ありがとうございました。