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 日本国内では、回復の見込みがなくなった人の死期を、医師が薬などで早めることを「安楽死」とし、患者の意思を尊重して延命治療をやめる「尊厳死」と分けている。

 安楽死を認める法律は国内にはない。安楽死を巡っては、家族の要望を受けた医師が患者に薬物を注射するなどして死亡させた東海大学の事件がある。95年、横浜地裁は①耐え難い肉体的苦痛②死期が迫っている③苦痛を取り除く方法を尽くしほかに手段がない④患者本人の安楽死を望む意思が明らか――を安楽死の要件として示した。

 尊厳死については、超党派の議員連盟はいわゆる尊厳死法、「終末期の医療における患者の意思の尊重に関する法律」の法制化を目指している。だが、反対意見も根強く、法案提出には至っていない。2人以上の医師が「死期が間近」と判断し、本人の希望が書面などで明らかな場合に、延命治療をやめても、医師の責任を問わないという内容だ。

 終末期医療に詳しい、会田薫子・東京大特任准教授は「今回のケースは、自身で薬を飲むことができる状態と聞いているので、安楽死というより医師による自殺幇助(ほうじょ)と言える。引っ越してまで死を選ぶとか、自分で生活をコントロールできるうちに死にたいと願う人が欧米には存在する。だが日本では認められていない」と話している。(辻外記子)