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ニール・ヤングが自ら語る、「Pono」の本質

ニール・ヤングはなにも、自分好みのガジェットだけをつくりたかったわけではない。ミュージックプレイヤー「PonoPlayer」開発の指揮を執り、デジタル音楽に殴り込みをかける彼がつくりたいのは、音楽を聴く経験そのものだ。10月に開催されたSalesforceによるカンファレンス「Dreamforce」にて彼が語った言葉を紹介。

 
 
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TEXT BY SOTA TOSHIYOSHI

10月、セールスフォース・ドットコム(以下:セールスフォース)が年に一度開催しているカンファレンス「Dreamforce」に登壇したニール・ヤング。同カンファレンスではwill.i.amが自身が開発を進めるウェアラブルデヴァイス「Puls」を発表している

ニール・ヤングはMP3が嫌いだ。だから、新しい音楽サーヴィスをつくろうとしている。ミュージックプレイヤー「PonoPlayer」と、ハイレゾ音源ストア「PonoMusic」。Kickstarterで始まったその試みは一気に注目を集め、2014年4月のファンド成功ののちも着々と進んでいる。


俺は、音楽が生み出す感情──鳥肌が立つような、あの感覚だ──を取り戻したい。ビットがどうしたとかではなく、アーティストが具現化したものを、そのまま聴けるようにしたいと思っている。

これは、20世紀の終わりくらいから考えていたことだ。ただ、さまざまなハードルがあって、ここまでくるのに時間がかかった。

技術は人の暮らしを良くするものでなければならない。新しいテクノロジーを使えば、人の暮らしはもっとよくなるはずだし、よいインプットを生み出せると思っている。でも、これまでは、そうした“暮らし”に対する視点が欠落していたのではないか?

いま、音楽そのもののもつ意味は薄まっている。音楽を聴いたとき、そのアーティストが誰であるかだとか、どんな曲であるかがわかるだけで留まっていてはいけない。そのとき、テクノロジーはいろんな感覚を与えうるものだし、Ponoはきっと、それを与えてくれる。実際にさまざまなアーティストにPonoを体験してもらったが、フランク・シナトラだって(もしPonoを体験できたら)きっとそう思ったんじゃないかな。

古いレコードを大事に守り続けるだけでなく、本当の質を維持し続けることが大切だ。音楽を単なるコピーではなく、生かし続けることが必要だ。なぜならコピーでは人の心は動かせない。俺は、かつて世界を動かした“音楽の力”を再現したいんだ。

スティーヴ・ジョブズはヴィジョンのある男だったと思う。彼はiPodを生み出し、「音楽のライブラリを持ち歩くことができる」という体験を実現した。これは歴史に残る画期的なことだったと思うが、いまにして思えば、あくまで「土台」だ。Ponoはその延長線上にある。次の世代へのつなぎになる。いままでの音楽の歴史を維持し、継承していく役割を果たしたいと思っている。

「Pono World」(ポノ・ワールド)と俺が呼んでいる世界観がある。これはまだ生まれたばかりだからシンプルだが、みんなの魂に足りないものをわかってもらうための世界だ。いま音楽にはメジャーが出しているものもあれば独立系が出しているものもある。たくさんのアーティストがいて、長い歴史をのあるレーベルもある。だから交渉には3年を要した。そして、彼らが保有しているトラックを出してもらえるよう、契約を結んでいる。

いま、それら膨大なトラックをPonoのシステムに入れていこうとしているところだ。いまライブラリには61万1,184という数が入っているようだが、これがどんどん増えている(数字は発表時)。数字を見ていると頭がおかしくなってしまうし、まだ足りない、まだ足りないといらついてしまうんだが。

PonoMusicの“いま”を伝えるサイト「Pono World Times」では、リアルタイムで取り込まれていく音楽の数がカウントアップされている。


 
 
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