序文
この書はすべての魔法を修めし大魔術師、メテオ・ブランディッシュその人と弟子たちが書き残したとされる書物を集め、編纂し、ひとつの集大成にしたものである。
書はいずれも古く、さまざまな写本と異本と断章から成り、その中には一般的には偽書とされているものもある。
だが、これまで多くの研究者が独自の研究を残し、さまざまな説がこの世界に生み出された。著者が成すべきことは、完全無欠な研究成果などではなく、後の世の研究者たちに底本の底本となるべき一冊を残すことにある。
そうした意味において、この書は不完全なものながらも、一定の成果をあげられたのではないかと自負している。
メテオ・ブランディッシュ。
その生涯は謎に包まれつつも、多くの伝説的な物語が残されている。
ある研究者は、メテオがヤギ飼いの息子であり、そこから努力して大魔術師となったという。
ある研究者は、メテオが外なる時空よりやってきた者だと主張する。
ある研究者は、メテオこそが根源神たるイシスであると考える。
また、ある研究者はメテオはイシスが遣わした使徒であるとも結論している。
いずれの説も、そうと頷かされる示唆に満ちており、どれが正しいのかは筆者にはわからない。
筆者ができることは、より多くの写本や断章から得たものを保存し、誤解を恐れることなく自らの意見も述べるだけある。
現在までメテオの死亡は確認されていない。
もしかすると、今もこの世界のどこかで魔術の深奥に触れ続けているのかもしれない。
伝説によれば、ごく親しい仲間たちのみで霊感を交わし合ったとされる、『ワールドトークRPG』なる謎の魔法の品物――正しくはその言葉が何を意味しているのかはわからない。それはもしかしたら書物なのかもしれないし、もっと観念的な何かなのかもしれない。
だが、生涯においてメテオの著作の中ではこの言葉が数多く残されている。
いまだ謎多きメテオの生涯と研究ではあるが、不肖筆者もこの名前をこの本のタイトルとしよう。
もし、大魔術師メテオがこの世に存在しており、この書の名前を不快に思うのであれば、いつでもこの名を撤回し、出来る限りの謝罪をさせてもらうものである。
著者がこの名を使うのは、もしかするとメテオその人にお目にかかりたいが故のことかもしれない。
書きたいことは尽きぬのだが、今はここで筆を置こう。
以上を以って、『ワールドトークRPG』という、奇妙な題名を持つ書の序文とさせていただく。
書籍化で公開される部分を珍妙な感じで差し替えています。
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